第十六話 変死の謎
この世界でカンザキカナデという名は、それほど
ありふれた名前ではない。
となると異世界人と言う事になる。
だが、同じ名前というのもおかしな話だった。
それなら奏だって、話す事もあるだろう。
最近では向こうの世界の話をよくナルサスに
話してくれる事が多くなっていた。
学校という学舎の事や、私生活。
いつも一人だった事や、唯一できた友人の事。
時折り寂しそうに言うのが気になってた。
「だがな〜、近づいて来た時も敵意はなかった
んだ」
ケイヒードとて、殺気があれば警戒だってする。
だが、全くなかったという。
「殺気があって近づいてくれば私が気がつく。
それがなかったんだ。カナデ狙いとは考え
にくいな……ならどうして」
「そういえば、そのカンザキカナデという青年
も倒れていましたね……連れの人が連れて行
来ましたが……」
「そうだな……その連れについてだが、今有名
な賢者だそうだ」
エリーゼはギルドで聴いた話を出した。
最近各地のダンジョンが休眠状態になっている
という。
それが起きるのは、賢者が訪れたギルドのそば
にあるダンジョンばかりだったという。
「最近の騒動を起こしている賢者かもしれない
と言う事だ」
「それに関しては隣国でもあったらしい」
領主の耳にも入って来ているらしい。
領主のハーゼンが付け加えるように最近各地で
起きているダンジョン休眠現象を語ったのだっ
た。
それによって魔物は弱くなり、冒険者の収入が
激減したのだと言う。
そして賢者は倒した魔物の素材は売っても魔石
は売らないらしい…と。
「では、魔石を使って何かを企んでいると?」
エリーゼの言葉に領主のハーゼンが苦笑いを浮
かべたのだった。
「そしてもうひとつ。異世界人が謎の変死をし
ていると言う話だ。帝国では多くの異世界人
を有しているせいで各国から非難を浴びてい
てなぁ〜、ならば各国へと派遣したのだが、
どうにもそこでいきなり変死するという事が
起きているらしい」
「変死ですか……」
それも眠るように死ぬのではなく、掻きむしっ
たかのように苦しんで死んでいるらしかった。
「そして、帝国に『丸薬を送ってくれ』という
ことづてを残す人が多く、帝国でもなんの事
かと話が出ているらしい。」
「それは麻薬の類いですか?」
「いや、そうではないらしいんだ、それまでは
普通で、夜中に苦しみ出したようでな…」
結局は死因がわからないらしかった。
たまたま居合わせた別の賢者が診察したらしいが、
薬物のたぐいではないと言う。
なんとも奇妙な出来事だった。




