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第十五話 今の自分と過去の自分

神崎は手を差し伸べると、自己紹介をした。


「神崎奏だ、よろしくな?昨日この街に着いた

 ところなんだ」

「どうして……その名前……」

「どこかおかしいかな?」


全く気づいていない。

神崎の姿は高校生だった時のままだった。


「その姿……嘘だろ……」


少女?はずっとそれだけを口にすると、黙って

しまっていたのだった。


そしてまるで磁石が惹かれ合うように、神崎は

その興味をそそられる少女?に手を伸ばしたの

だった。


触れた瞬間、バチっと激しい音となって辺りの

空気が弾けた気がした。


一瞬にして少女?の意識も、神崎の意識も同時

に混ざり合った感覚がして、意識を失っていた

のだった。


周りからしたら、何が起こったのかわからなか

っただろう。


触れた瞬間、二人が同時に意識をなくしたのだ。


「奏っ!」

「神崎くんっ!」


ナルサスの焦った様な声がした。

それと同時に弘前の声も重なる。


お互い『なぜ?』とでも言いたそうな顔で互い

を見るが、それよりも倒れた身内へと駆け寄る

と抱き上げたのだった。


「大きくなって神崎くんを運べるよね?」

『当たり前だ!主は我が運ぶ」

「ならいい。すぐに出るよ」


小さかった小馬が一気に大きくなる。

背中に弘前と神崎を乗せると外へと飛び出して

行ったのだった。


残されたナルサスは奏を抱き上げる。

全く動かない主に不安を抱きながら治療院へと

向かったのだった。


一体何が起きたのかわからなかった。

いきなり話しかけて来た男に触れられた瞬間、

身体が傾き倒れたと言うのが見ていた人間から

の証言だった。


だが、倒れただけならすぐに起き上がる。

だが、奏は違った。


意識がなく、ただ身体だけがあると言う感じだ

ったのだ。


こんな事、聞いたこともなかった。

治療院でも手の施しようがないと言われ、家へ

と帰ってきたのだった。


もちろん、このことはエリーゼから領主へと伝

わったのだった。


今は領主様の屋敷で眠っている。

そばにはアンネが付き添っている。


一番側にいたはずのケイヒードとラナは何が起

きたのかさえ把握できてはいなかった。


「奴は何者だ?」

「名前は確か……カンザキカナデと名乗ってい

 たように聞こえたが……知ってるのか?」

「カンザキ……カナデ……だと?」


エリーゼもナルサスも知っている名前だった。


それは主の名前と同じだったからだ。

黒い髪に黒い目をしたあの青年は主と同じ名前

を名乗ったという事になるのだった。


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