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第十二話 知られちゃいけない

湯当たりしたのかぐったりした奏を抱えて風呂から

上がるとナルサスは自分の部屋へと運んだ。


コップに水を持って来ると、側にあるサイドテーブ

ルに置く。


「大丈夫ですか?」

「うん……ちょっとのぼせただけだから……」

「ほら、水。飲めますか?」

「うぅ……すぐ子供扱いするぅ〜」


そう言いながらも背中を支えられて水を差し出され

ると、素直に受け取りコクコクと飲み干したのだっ

た。


「このまま寝ますか?」

「う〜ん、ちょっと起きたいかも」


神崎に言われてナルサスは奏の体を支える。


いつもの日課のようになっているポーション造りは

毎晩やっている事だった。


戦闘で魔力を使い果たす場合を除き、大体1日に10

本を目安に作成している。


「いつものとって来ますね」

「自分で行くよ?」

「いいえ、持って来ます」


今日のナルサスは決して譲らなかった。

テーブルに並べると材料をすりつぶし鍋に入れる。

かき回しながら魔力を込めると、ポンッと軽い音

がしてポーションが出来上がるのだった。


本当に不思議な作り方だった。


「奏は器用だね…」

「え?俺って器用なの?」

「そもそもそんなに簡単には出来ないって気づい

 てますか?ポーション一本で普通の一般人が汗

 水働いて稼ぐ1ヶ月分の金額になってうるんです

 よ?」


神殿で生成された回復ポーションは一個が銀貨10

枚もするらしかった。

冒険者のような、稼ぎのいい職業の人間でもおい

それと何本も買って置けるような代物ではないの

だという。

それを簡単に作れてしまう神崎は神官と同じ神聖

魔術の使い手と呼ばれる種類なのだという。


「その神聖魔術ってバフと関係あるの?」

「神聖魔術は治癒魔法を得意とし、国でも言いな

 りには出来ないほどの権力を持つ神殿が使う魔

 法です。そして、神聖魔法が使えると知られる

 と……神殿に連れて行かれ、一生外には出れな

 くなるんです」

「えっ……冗談だよね?」

「冗談じゃないですよ?そもそも、治癒魔法をそ

 う簡単に使われては教会が困ってしまいますか

 らね〜、寄付金で成り立っているような所です

 から、安い金額で治療をするとなれば、民衆は

 すぐに流れて行ってしまいますからね。あらか

 じめ、囲い込んでおくんです」

「……それって誘拐じゃ……」

「だから、このポーションの事は口外しないよう

 にと魔術契約をしたでしょう?」


奏が考案したものは、全てギルドに売る際、口外

しないようにと厳重に注意と魔術を持って契約を

交わしたのだった。


「その事ってみんな知ってたの?」

「当たり前です。」


ナルサスのハッキリとした声で即答され、神崎の

考えが甘かったのだと実感させられたのだった。


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