第四話 相次ぐ訃報
猪島は気づいてしまった。
賢者の目的が自分たちを強くする事ではない事に。
実際強くしたいのなら訓練や実践を踏まえてレベル
という概念から魔物を多く倒し経験を積ませるのが
一番早いだろう。
だが、そうはせずに飲めば強くなる丸薬などを渡し
てきたのだ。
時間がなかったというのもあるが、それだけじゃな
い気がした。
最近、王城で見かけた神崎の事も気になった。
召喚時には姿を見せなかった上に、強い魔物をテイ
ムしていたからだ。
弘前も神崎がいれば、死ぬ事もなかったかもしれな
かった。
何より、神崎がチートと思うほどに強かったのだ。
連れなのか腕に抱えられていた仔馬も普通ではな
かった。
重力を操るせいか、真っ白な毛並みに額に生える
角。
これはまるで伝説の生き物、ユニコーンそのもの
だった。
それをテイムする神崎はそれ以上なのだろう。
魔物をテイムするには、それ以上に強くある必要
があったからだった。
装備も普通の服を着ているだけのように見えた。
この世界では防具も大事な役割りをする。
戦闘時にダメージは全部防具の耐久性が肩代わ
りしてくれる。
なので耐久値の高いものを選ぶ。
今猪島が着ているアーマーなどは1000を超え
る耐久値をもっている非常に優秀な防具だ。
オークなどの大型の魔物は数人がかりで取り
囲んで倒すのが主流だ。
猪島もそれがわかっているので、あえて一人
で突っ込まずに足並みを合わせる。
あの丸薬を飲んだ時は、本当に一発で倒せた。
だが、今の猪島にはそんな事は出来はしなか
った。
「猪島様、どうなさいますか?」
「どうって?みんなで一斉に攻撃するぞ」
「ですが……猪島様なら一発かと……」
「それじゃ〜兵士達の訓練にならないだろ
う?」
「なるほど、では周りを取り囲め!」
この部隊の隊長らしき人が指示を出すと、
みんな従っていく。
オーク一匹に、数人の兵士が周りからチク
チクと傷を負わせて、弱った所にトドメを
刺したのだった。
「よし、この調子で連携を取りつつ、全員で
あたるぞ!」
「「はいっ!」」
兵士と一緒になって戦うという事が、どれだ
け兵士達の活力になる事か。
これは全て、猪島のレベルを上げて、丸薬を
自分の手で作り出すという野望の為だった。
月日が経つにつれて、仲間の訃報をよく耳に
するようになった。
もう、今は何人が生き残っているのだろうか。
戦えなかった生徒は無理にでも魔法や剣を手
に取ったが、実際に魔物を前にすると足がす
くむ。
ゲームで慣れているオタクでさえも、はじめ
てはビビりまくったものだった。




