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第二話 胸騒ぎ

雨は意外と厄介だった。


次の日も降り続くと、また次の日も止む事は無か

った。


「これっていつまで続くんだろうな〜」

「さぁ〜ね。急ぐ旅ではないけど、ここまで足止

 めされるとね〜」

「いっそ、雨雲に向かって魔法ぶっ放すとか?」

「……」

「……冗談だって…」

「いや、その手があったかも」


神崎の冗談に、弘前は相槌を打った。

すぐに外へと出ると杖を取り出した。


しとしとと降り続く雨に、真っ黒な雲。

そこに向かって小さな竜巻並みの水の渦を作る。


それを空に向かって撃ち放ったのだった。

何発も打ち放つと、次第に雲の切れ間が出来て

きた。

そして、光が差し込んだのだった。


「雨って止ませられるんだな……」

「まぁ、強制的にだけどね」


さすが異世界というべきだろうか。


「神崎くん?」

「ん?いや、なんでもない……」


神崎の脳裏に浮かんだのは、果たしていつの事だ

ったのか。

クラスメイトの事はちゃんと覚えている。

なのに、自分の事が思い出せないでいたのだ。


どうやってここに来たのか。

自分が長野達になぜ虐められていたのか?


過去の自分はどうだったのか。

そして、今こうして話してはいるが、康介とはど

う言った関係なのか。


弘前の行動はどれも神崎の為にやっている事が多

かった。


だからといって友達の様に…いや、それとも違っ

て思えるこの関係は一体何なんなのだろう。


どうしてもそのことだけは…直接聞く事が出来な

かった。


「これで先へ進めるね〜」

「そう…だな」


ルイーズ領主は大変優秀な人だと聞いていた。


街の人には信頼され、ギルド内の揉め事も、兵士

達が解決してくれるらしく、秩序が守られている

のだという。


そして、何より騎士の中には元冒険者の女性がい

て、無敗神話が王都まで届いていた。


貴族からの護衛を全部断ってまでこの一領主に入

れこんでいるという。


それほどまでに魅力的なのだろうか?

確か結婚して一人娘がいると聞いている。


「ルイーズ領は安全で魔物被害も少ないらしいよ。

 ただ、近くに危険な魔物が多く生息しているから

 冒険者のレベルも上がっているって話だし…」

「へぇ〜、そうなんだな……」

「最も、ダンジョンコアさえ無くなれば、低レベル

 の魔物しかいなくなるから護りも楽になるんじゃ

 ないかな〜」


そばにはいくつかのダンジョンがあるので、それを

制覇するつもりでいた。


急に御者が駆け込んでくると、明日には馬車が出せ

ると言ってきたのだった。


「康介……あのさ…」

「どうかした?」

「………いや、なんでもない」

「今日はゆっくり過ごそう」

「そうだな」


なぜか胸騒ぎがする。

そう言いたかったが、それが何かは全く見当もつか

なかった。





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