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第一話 監視された旅

王都を出ると、村々に立ち寄りながら、野宿を避

ける様に、町から街へと移動していく。


本当ならもっと早く着くはずだったが、野宿を避

ける為か、かなり大回りをした気がする。


「森を突っ切れなかったのか?」

「あぁ、それだと野宿することになるからね。き

 っとそれは控えるように言われてるんじゃない

 かな?」

「別に野宿くらい……」

「そうだね、でも…僕は虫が苦手だから助かるけ

 どね…」

「…まぁ……それは……そうだな」


そこには神崎も同意だった。

こうして、旅は順調に始まっていったのだった。


街では一番いい宿を紹介され、代金は護衛兼御者

が払ってくれた。


「なんかいたれりつくせりって感じなんだけど…」

「嫌だった?」

「う〜ん、なんだか…」

『気持ち悪いんじゃよ……人間は何か利益が見込

 めぬとこの様な事はせんのじゃろう?』

「確かにそうだね。僕に恩を売っておくのと、も

 う一つは……きっと監視も兼ねているんだろう

 ね」


分かってはいたが、必ず見える場所に必ずいる所

を見ると、どこかにふらりと消えない様にとお目

付け役と言ったところだろう。


「なんだか、窮屈だよな〜」

『いっそ、食べてしまおうか?』

「ユニ、人間は食べないで欲しいな。お腹空いた

 のなら何か作るからさ」

『それはいいのう。我は主の作ったものの方が好

 みじゃ♪』


魔物だと言うのに、魔力のあるものより、手料理

を好むとは、よっぽど気に入ったらしい。


よく懐いているし、自分の事のように主を護ろう

とするところは、弘前さえも認めている所ではあ

った。


コンコンッとノックする音がすると、ドアの向こ

うに気配を感じた。


「はい」

「賢者様、明日の事でちょっとお話をいいですか」

「どうぞ」


中に招き入れると御者の男は明日の出発を見送る

連絡をしてきたのだった。


「理由を聞いても?」

「はい、今雨が降っているのがお分かりですか?

 この雨なのですが、この付近は昨日から降って

 いるらしく、この先の橋なのですが雨がやむま

 では通行ができなくなるそうなのです。」

「橋ですよね?」

「はい、山を登れば別ですが、馬車を使おうと思

 うと、雨で流されない様にと橋をわざとあげて

 しまうそうなんです」


このあたりは水の被害が多いらしく、大雨で水か

さが増すと橋が流される被害が多く、あらかじめ

橋をあげてしまう事があるのだという。


そうなれば、渡るのは不可能になってしまう。


「では、雨が止んで通れる様になるまで宿を追加

 で頼まなければなりませんね」

「それなら先程、手続きしておきました」

「そうですか、ご苦労様」

「はい、今日はごゆっくりおやすみください」


出ていく男を見送りながら呆れた様な顔をすると

お互い肩をすくめたのだった。

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