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第二十五話 非人道的な賢者

少女の行方を知っていそうな弘前に会いに行く事

にしたのだった。


食事は部屋まで運ばれてくると、早々に切り上げ

あとはユニに渡した。


「もう俺はいいから、あとはユニが食べていいよ」

『いいのか?なら、全部食べてもいいのじゃな?』

「うん、もうお腹いっぱいだし。好きにしていい

 よ」


勢いよく食べるユニコーンの姿を見て、神崎は部

屋を出た。


城の地下室へと降りて行くと、ちょうど起きた

ばかりの弘前と鉢合わせたのだった。


「あ…おはよ」

「もう起きたんだね。気分はどう?昨日は体調

 悪そうだったけど?」

「そう……かな。自分では記憶がなくてさ〜」


弘前が言うには、神崎は体調が悪そうだったと

いう。

だが、そんな記憶は全くない。

覚えていないだけなのか?それとも……。


少し不安になるが、まぁその事は置いておいて、

疑問に思っていた事を投げかける事にしたのだ

った。


「康介さぁ〜昨日、俺が保護した獣人の子供っ

 て知らないかな?居なくなっちゃったんだけ

 ど…」

「知らないな〜、帰ったんじゃないか?」

「帰ったって……どこに?」

「そんな事は知らないよ。でも、結局は奴隷だ 

 し、帰る場所といえば……ねぇ〜」

「そんな……まさか……」


自分から奴隷としての帰る場所へ戻ったとでも

言うのだろうか…と考えたのだった。


しかし……。

助けてとしがみついてきたあの姿を見れば、自

ら戻るとは、思えなかった。


では、一体どこに消えたのだろう。


探そうにも名前も聞いてないし、顔も説明でき

ない。


ただ、獣人の少女とだけしか知らなかった。


ため息を漏らすと側にあった椅子に腰掛けると

考え込んでしまった。


事情を知っている弘前にとっては、知らぬ存ぜ

ぬを決め込む気でいた。


「今日も見に行ってくるよ」

「待って、今日は僕も行くよ」


昨日見た訓練場での光景に嫌な予感しかない。


あのまま戦わせていたら、絶対に殺されていた

だろう。


どんな理由があっても、命を奪う事はいけない

と思う。


相手が敵意を向けてきたのならともかく、弱い

相手に多数でかかるのは許せなかった。


「あんな事して何の訓練になるっていうんだよ」

「……」


神崎の考えている事は、弘前にとって手に取る

様にわかる。


いつも、弱い立場の人の気持ちになって考えら

れる人だから。

だが、今はそれが少し疎ましく思う。


他所の他人なんてどうでもいいのではないか?

獣人なんて人間ですらないのだ。


弘前にとってはただのゴミ以下の存在だった。


「奴隷を助けても、神崎くんにはメリットな

 んて何も……」

「そう言う問題じゃないよ…人の命をそんな

 軽く考えたくなんてないんだ」


昔のままの彼に弘前は動揺していた。

今まで弘前のやってきた事は、人道的とは程

遠い行いばかりだったからだ。


そもそも神崎を作り出す為の犠牲は数万人と

いう数が犠牲になっているからだった。




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