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第二十二話 人を殺すという覚悟

神崎は奴隷の少女を一時的に預かる事にした。


久々のクラスメイトとの再会だったが、実に不愉快

だった。

イジメを見て見ぬふりをする様な卑怯な奴らだとは

思っていたが、異世界に来てからは訓練と称して子

供に刃物を持って襲いかかるなど、普通じゃない。


「大丈夫だからね、お母さんに合わせてあげるから」

「……お兄ちゃんが助けてくれるの?」

「あぁ、勿論。俺に出来る事ならなんでもやるから

 安心して」

「お母さんもお父さんも殺されちゃったの……もう

 一人は嫌だよ……」


少女は神崎にしがみつきながら怯える様に肩を震わ

せ泣き出したのだった。


部屋に戻ると、ベッドに寝かせると弘前のいる地下

へと向かった。

広い城内はまるで迷路だった。


しかし神崎にはユニコーンが付いている。

そのおかげか、迷う事なく辿りつく事ができた。


コンコンッ。


「康介〜いるかぁ〜」

「いいよ、入っておいで」

「入るぞ〜、ちょっと相談が……」


中に入るとさっきまで殺風景だった部屋がいつのま

にか荷物で溢れかえっていた。


「これ、どうしたんだよ?」

「あぁ、アイテムボックスに詰め込んであったのを

 出したんだが……仕分けしてなくてな……」

「はぁ〜、全く。手伝うよ」

「助かるよ。それにしても何か聞きたかったんじゃ

 ないのかい?」

「あぁ、その事なんだが……」


さっき見た事を包み隠さず話したのだった。


「それは神崎くんが悪いよ。奴隷はそう簡単に解放

 出来るものじゃないんだ。ましてや、訓練用に買

 われたという事は目的は、人を殺す事に躊躇いを

 覚えさせないようにと言う事だろうからね」


弘前が言っている事は的外れではなかった。

ゼニスの思惑はそこにあった。


戦闘が苦手というのは、まだ他人の命を奪った事が

ないから起こる事で、一度殺せれば問題なく他所の

国に渡せるというものだったのだ。


人すら殺せない英雄など、あり得ない。

英雄とは、魔物でも人でも悪とされるモノを倒せる

力を持つものを称していうのだ。


勿論、誰もがそれを願っているが、必ずしもそうと

は限らない。


今回召喚の人数は多かったものの、実際使い物にな

る人員は少ない。


前に立って戦えるのは、数人だろう。


そのうちの3人は消息をたっている。

戦力にはなっても性格に難ありだったが、力はあっ

た。

長野仁、上島竜、江口洋介。

この3人はダンジョンで力をしめした。

それからは遊女街で何度か見かけられた事もあった。

そして、真面目だった日比野裕樹もいつの間にか居

なくなっていたのだった。



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