表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/319

第二十話 弱き者

宝物庫を出ると、弘前が使っていた部屋へと案内

された。


地下のせいか真っ暗で何も見えない。


光の魔法で宙に小さな光の球体が浮かんでいる。


「ライト!」

「へー便利……だけど、こんな場所にずっといた

 のか?もっといい部屋あっただろう?」

「いや。誰とも会わずに実験だけをするにはここ

 が一番落ち着くんだ。それに…神崎くんはここ

 で生まれたんだよ」


弘前の言葉に一瞬翳りがさす。


もちろん、それに気づいたのはユニコーンだけだ

った。


契約で繋がっているせいか神崎の心の動揺までも

伝わっているようだった。


『主…我は主と共にいる事が楽しい。だから後悔

 なんかする事はないぞ』

「ユニ……励ましてくれるの?」


小さくなったままのユニコーンを持ち上げると腕

の中に収める。


「ありがと…」


ぎゅっと抱きしめる腕に力が籠る。

魔物にとって、それくらいの力どうと言う事はない。

ただ、主人が辛いと思うと、同じ様に心が辛さを感

じてしまうのだった。


茶色に輝く石がこの城にあった星の雫だった。


すぐに神崎の石の中に統合してしまったが、今も胸

の辺りが暖かい気がする。


「見つかって良かったよ。しばらくは歓迎されると

 思うけど、そのあとはすぐに出ていくからね」

「あ……うん」

「神崎くん?」

「なんでもないよ。こんな窓もない部屋は窮屈だし

 ね」


結局、神崎とは部屋を別々にしてもらった。

窓のある上階の部屋に変えて貰うと、よく外を眺め

ているらしかった。


下の訓練場では今日も獣人を追い回す同級生がいた。


「あれは……」


見覚えのある顔に、制服。

何人かは剣や槍を持っている。


そして追い回しているのはまだ幼い子供だった。


「一体何を……止めなきゃっ!ユニいくよ」

『主っ……』


ユニコーンの背に乗ると一気に下に飛び降りたの

だった。


同級生と子供の間に入ると、トドメを差し掛ける

ところを剣でいなした。


カキーンッと刃先が合わさって音が響く。


「一体何をしているんだ!こんな子供を追いかけ

 まわすなんて……それに刃物を向けるなんて危

 ないだろう!」


神崎の登場に、みんなの視線が驚きを含んでいた。


「神崎……どうしてお前が…」

「生きていたの?」

「嘘っ……どうして……」


口々に不可解な事を言っていた。


その中の一人が神崎を押し除けて後ろに隠れた子

供を刺そうとしていた。


「やめろって……言ってるだろ!」


一気に魔法で牽制をする。


炎を纏うと、一気に周りを覆った。


「なんだよそれ……チートかよ」

「今までいなかったのに、どうしてそんな……」

 

どうにも話が通じなかった。


「お兄ちゃん……助けて……」


後ろで庇われた子供がか細い声で言う。


「大丈夫だ。俺が護ってやる」

「神崎、そこをどけ。そいつを殺さないと。俺ら

 が騎士達に……」

「それは別の事だろう?子供を虐めるなんてな…

 向こうの世界でもそうだったが、弱いものにし

 かたち向かえないんだな?」


長野達には剣すら向けられなかったが、子供相手

なら簡単に抜く。

そんなクズの様な奴らと同じ世界の人間だと思う

のが情けない気がしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ