第二十六話 支援職のバフ
食事を終えると、デザートを平らげる。
勿論ナルサスにも同じものを頼んだ。
普通はありえないのだと言うが、そこは知らない。
神崎にとっては、同じ人間なのだ。
いくら奴隷でも、そんな雑な扱いなどしたくなかっ
た。
「さぁ、ここからが大事な話だ!しっかり聞いてお
けよ?」
「はい」
真剣な表情のエリーゼにナルサスが背筋を伸ばす。
「これからは、戦闘時に予想外の力が出る事だろう」
「……予想外のですか?」
「そうだ!筋力もそうだが、スピードも普通じゃな
い!ましてや。防御力に関しては吹っ飛ばされて
も無傷だ!傷も勝手に治る!分かるか?それは普
通じゃ考えらえないんだ!」
「はぁ………?」
確かにエリーゼの言いたい事は分かるつもりだった。
だが、ここまで普通じゃないと連呼しなくてもいい
と思う。
「分かるか?普通の訓練の時には全く使えない力を
手に入れるんだぞ?私はこれでもA級冒険者だっ
たんだぞ?現役を引退して力の衰えに怯えて辞め
たんだ!なのに……今更…」
今更、現役以上の力を得ることなど……あえりえな
いとつづけたのだった。
「分かったか?カナデと一緒に組むと言う事は予想
外の力を手に入れる事になるんだ。ただ、その代
わり、カナデは自分にバフははかけられない。だ
から、敵の攻撃を受ければ死にかねないと言う事
だ!」
「レベルはどうなっているんですか?パーティーを
組めばすぐに上がるかと……」
「それがな……」
エリーゼさんの視線がカナデの方を見る。
神崎は自分の手を出すと、カードを出した。
カードには名前とレベルなどのデータが載る。
そこには、いまだにレベル1となっている。
「レベル1!まだ実践をしていないのか?」
「違う、私と一緒にダンジョンボスまで倒したん
だ、だが…レベルが上がらなかったんだ」
「他の数値も……低いですね」
「そうなんだよ……これには私の便乗でクリアさ
せてもらっていると思っている冒険者から暴言
が来る事もあるんだ」
「それは……」
エリーゼはいつも神崎に暴言を吐く奴等を睨みつ
けて牽制していた。
それでもやめない場合は剣を抜きそうなくらいの
殺気を放つのだった。
食事を終えると簡単な運動としてダンジョンへと
潜ったのだった。
聞くよりも実践した方が早いと思ったのだろう。
そこでエリーゼさんの言っている事を思い知るの
だった。




