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第十八話 賢者の帰還

トリスヴィアは護衛と共にギルドを訪問していた。

王族が訪ねていくなど、滅多にない事だった。


「少し訪ねたい事があるんだが……」

「これはトリスヴィア殿下、こちらではなんです

 ので、上の部屋でお聞きしても?」

「あぁ……構わない」


冒険者は荒くれ者が多いと聞く。

戦闘ばかりをしていると、腕っぷしも強くなると

いう。


中には女性もいたが、体格は今のトリスヴィアよ

りもかなり屈強だ。


「ルイーズ領は今、どうなっているんだ?」

「それは…どう言った事がお聞きになりたいので

 すか?領内の情勢でしたら城の情報機関の方が

 詳しいのでは?」

「いや、聞きたいのは、そこじゃないんだ。最近

 の人の流れというか……最近住み始めた様な、

 流れてきた人物はいるのかが知りたいんだ」

「人……ですか?」

「あぁ。そうだ」

「それでしたら、依頼くだされば細かく調べさせ

 ますが?」

「では、お願いする」

「分かりました。では。こちらにご記入ください」

「あぁ。できれば詳しく。それと、最近異世界人

 を処刑したそうだな。それについても頼む」


トリスヴィアはせっかくの人材を無駄にしたと思

っていた。

強い能力なら、それを使ってこそだ。

そういう考えだったからだ。


犯罪を犯したのなら、奴隷紋を刻めばいい。

そうすれば自由に動く手足となろう。


安価で働き続ける労働力は実に効率がいい。


だから力の強い獣人を無闇に殺す事には反対だっ

た。


それにあまり資源のなかったルイーズ領主の最近

の収益の量を鑑みて、もっと税をとってもいい気

がしたのだ。


数日が過ぎて、ギルドからの報告を受けると、す

ぐに父を探しに城内を探していた。


「父上!父上はいますか!」

「なんだ騒々しい」

「お話があります。税が減って、困っていると言

 っていたではありませんか!その事でお話が…」


父を探していると、そこにはちょうど来客が来て

いた。


それは見覚えのあるフードを被った賢者の姿だっ

た。


「賢者様、お帰りくださったのですね!」

「少し寄り道をしに……このあと南へと向かおう

 と思いまして……」

「それはルイーズ領の事ですか?」

「よく知ってますね?今は色々と変わっていって

 いるとか……」

「はい、あそこには異世界人が住み着いている可

 能性があります。お菓子もそうですが、様々な

 レシピを考案している人物がいるんです。もし

 それが異世界人なら、囲っていると思うんです」

「ほう、面白いですね。僕が調べてきましょう」

「そんな、賢者様にそんな事……」


トリスヴィアの言葉に弘前は興味を持った。

なぜならば、神崎の作るもの全てが、すでに登録

済みだったというのだ。


それには、いくら対応しようにも無理だった。


なら。いっそ顔を拝んでやろう!

と考えたのだった。


「賢者様、お隣にいるのは?」

「あぁ。彼は僕の大事な友人だよ。僕にとっては

 大事な人だから、礼儀を持って接して欲しい」

「分かりました。賢者様」


ここでは王も皇子も、皇女さえも賢者の思うまま

だった。


「康介、なんか居心地悪くないか?」

「そうかい?ここの地下の実験室で神崎くんは産

 まれたんだよ。ずっと会えるのを楽しみにして

 いたんだ……」


弘前は懐かしむ様に案内したのだった。


今は器具も、何もないただの真っ暗な部屋だった。


「窓もないし、ここで寝起きしてたのか?」

「あぁ、窓なんて僕には必要なからね。眠くなっ

 たら寝て、起きていられる限りはずっと実験。

 そんな毎日だったよ。それも報われる日が来

 るんだから、これほど嬉しい事はないよ」


神崎の顔には一瞬翳りが見えたのだった。

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