第十七話 奴隷の使い道
誰も居ないところでは、一緒にお茶を飲み、一緒
にお菓子を食べる。
普通ならそんな事は許されないのだが唯一、ニア
だけがトリスヴィアの前でだけ許されるのだった。
「やっぱり有名な店のお菓子は美味しいですね?
殿下もそう思いませんか?」
「あぁ……変わってるな……どこの菓子屋が出し
たんだ?」
「それがですね〜、なんと冒険者ギルドの直轄
なんです!凄いですよね〜それも、南のルイ
ーズ領で販売されたのが最初で、レシピを買
った王都の職人が売上の何パーセントかを払
ってでも作りたいって言い出したのがきっか
けだって言ってましたよ〜」
「ルイーズ領だと?」
「はい、料理長がそう言ってました」
ニアの言う事は多分間違ってはいない。
となると、最近非常食や固形スープなども全部
がルイーズ領内で生産されている事になる。
「確か雇用も増えたと言っていたはず……。怪し
いな……こんなものを生み出す人物がいるのな
ら、もっと早く話題になっていたはずだ。だが
ここ最近という事は、流れ者という可能性も…」
トリスヴィアは考え込むと、ニアは横で冷めてしま
ったお茶を新しく淹れていたのだった。
「ありがとう、ニア」
「いえ、殿下が喜んでくれるのなら、僕すごく嬉し
いんです」
さほど歳の変わらないニアの頭で撫でると嬉しそう
に目を細めた。
「殿下の手…僕は好きです。触れられると、すっご
く気持ちいいです」
「ニア、煽てても何も出ないぞ?」
「えへへっ……」
まるで兄弟の様な光景だった。
だが、普通はこんな近くにいていい身分ではない。
「おい、ニア!サボってないで、仕事しろ!」
「あ……呼ばれちゃった……はーい!」
「行ってこい」
「はい、殿下。後で片付けておくのでそのまま置
いて置いてください」
「あぁ、わかった、わかった」
ニアを見送ると、さっき出ていったはずのゼニス
皇女が見えた。
「姉上趣味が悪い……」
ふと呟くと睨みつける。
姉弟仲はいい方ではない。
むしろ、悪いとも言える。
最初ニアを側に欲しいと言ったのはゼニスだった。
それを無理にトリスヴィアが自分の専用メイドと
した。
ただ、専用メイドとはいうものの、城での雑用も
含まれる為、四六時中一緒にいるわけではないの
だった。
数日後、ぞろぞろと獣人奴隷を連れた騎士がいた。
まだ幼い子供だったが、手足は太く、鋭い爪がつ
いていた。
部屋に閉じこもっていた異世界人を集めると、同
じ部屋に閉じ込めたのだった。
「さぁ、戦いなさい。奴隷如き倒せない様では、
次は騎士の相手をしてもらいます。勿論真剣
でね」
それを言われた異世界人達の目が忘れられない。
獣人といえど、まだ子供。
それに本気で刃物を持って向かっていくのだ。
剣の稽古や、魔法の訓練は受けていたせいで中途
半端に扱えるのだ。
威力が弱いせいで、何度も何度もぶつける。
どちらかが死ぬまで部屋から出さないと言われる
と、無惨なほどに何度も痛めつけていた。
そんな光景を見ると、反吐が出るとトリスヴィア
は思った。
「賢者様さえいれば争いなど……」
ため息を吐くと、街へと出る事にしたのだった。
ギルドへ出向き、ルイーズ領内の事を聞こうと
思ったのだった。




