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第十四話 姉弟

同じ異世界から、たくさんの人数を召喚した。

それにはちゃんと理由があった。


異世界人は必ず、スキルに恵まれる。


それがどんなものでも、現地人よりは優遇される

らしいと知っていた。


努力をしない異世界人ほど、タダ飯ぐらいの邪魔

な存在でしかない。


だから国は、異世界人を他所の国に売り渡す事を

考えたのだった。

それは、国同士の決まりに同等の戦力を有すると

言う構文があるからだった。


一つの国が多くの戦力を手にすると、戦争が起こ

る。


それをあらかじめ回避する為に国同士で条約を結

んだのだ。


お互いに不可侵である事。


ただ、これは人同士の国でしか有効ではなかった。


最近起きた獣人の国との戦にはそれは当てはまら

ない。

そう言って、国ごと滅ぼすという暴挙に出たのが

アルスラ帝国の8代国王アルラータ王その人だっ

た。


弘前の助言通り、軍を動かしあっという間に勝っ 

てしまった。


領土を占領し国力を増やした。


だが、それを他の国は良しとはしなかった。

そこで、召喚の儀で召喚した異世界人を譲渡する

事で、善意をアピールする事を考えたのだった。


「部屋に籠っていたのがまだいただろう?そいつ

 らを連れて来い。洗脳でもなんでもして、隣の

 国に引き渡せばよかろう?そうそう、そういえ

 ば、この前ルイーズ領主から居なくなっていた

 異世界人が連れ戻されていたな?確か、バフの

 効果が強く、使い勝手がいいと聞いたぞ?」

「はい、王様。その者は強力な支援魔法の使い手

 だとか……」

「なら、其奴は残せ。いいな?」

「御意に」


役に立たない人材から追い出す。

その事に誰からも異論は出なかったのだった。


そんな折、賢者が帰って来たという報告が上が

って来たのだった。


「そうか!賢者殿が帰って来たか!それはめで

 たい事じゃな……歓迎の準備をせい」

「はいっ……では、来たらすぐに案内をさせま

 しょう」

「そうじゃ、そうじゃ。まずは予に会いに来る

 様に言っておいてくれぬか?謁見はいつでも

 待っておるぞとな」



王は弘前に全幅の信頼を置いていた。

国が今の様に潤っているのは、長引かず即座に

戦が終わり、勝利を収めたからだった。


それを進言し、実行してみせた賢者の存在は大

きいのだった。


それが裏でどんな実験をしていようとも……。


王には関係のない事だった。

度々消える奴隷など、街のゴミ掃除としてしか

思えなかったのだから。


今日も困った事を尋ねようと、弘前を探す様に

言っていたところだった。


ギルド情報から、数日のうちには王都に到着す

るという趣旨の連絡が入って来た事に歓喜し、

城内では次の国政の方針が決まっていたのだっ

た。


「父上、トリスヴィアにございます!こたびの

 件どうして領主の采配をお咎めなされないの

 ですか?」

「あぁ、異世界人の生死の事か?まぁ、たかが

 一人であろう?」

「しかし、魔物をテイムできる能力と聞きまし

 た。そんな凄い力ならぜひ国の力に使うべき

 でしょう!」

「静かにしなさいトリスヴィア。召喚の儀式で

 呼んだのはわたくしですよ?」

「姉上っ!」


続けて入って来たゼニス皇女に皇子のトリスヴ

ィアはおし黙ると視線を向けたのだった。

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