第十三話 弘前の目的
あれから、防具が出来上がるまでに1週間を要した。
全く部屋から出てこなかった神崎がやっと食堂で飯
を取る様になっていた。
「おはよう、神崎くん。」
「……」
「そんなに警戒しないでよ。僕はいつでも神崎くん
の味方だよ?どうしても君を死なせたままじゃい
られなかったんだよ」
いつも明るく話して来る弘前は、全く変わる事なく
いつもの様に話しかけてきていた。
「どうして?………俺は、君のなに?」
「親友………それじゃ、不服だったかな?」
「……違う…どうして俺は……人の命の上に生きな
きゃいけない?」
「それはね……この世界の人間に君ほどの価値は
ないからだよ」
全く悪びれる事がなかった。
まるで、神崎がいればいいとでも言っている様な
口ぶりだったのだ。
ここは弘前にとって夢の続きなのだろうか?
「ここは現実なんだ……みんな生きているんだよ」
「知ってるよ。生きている価値もないのにのうの
うと生きている。そうだろう?」
「……」
神崎は弘前の事を怖いと思った。
今生きているのは彼のおかげだが、このまま一緒
にいる事に疑問を感じ始めたのだった。
「このあと王都にも寄るんでしょ?」
「うん、そうだね。宝物庫にちょっと寄って行こ
うかなって。神崎くんがいればカケラも反応す
るはずだしね〜」
防具が出来上がると、早速装備した。
軽くて、丈夫な薄型の胸当てに籠手だった。
「これはそのまま殴っても結構破壊力は出るから
使い勝手はいいと思うよ?」
「うん……そうだね」
気配を遮断するマントも一緒に作ってもらうと、
すぐに装備した。
海路を通る為に再び海へ出た。
神崎の気持ちは今も晴れないままだった。
『主……そう思い詰めぬ方が良いのではないか?』
「……」
『主が悪いわけではなかろう?どれだけの命で出
来ていようとも、それは作る過程で起きた事じ
ゃ、主が気を止む事ではないのではないか?』
「それでも……俺は沢山の命を使って生きている
んだって思うと……」
弘前のこれからやろうとしている事を、神崎はま
だ知らない。




