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第十二話 偽の記憶と偽の命

弘前の後を追う様についていくと、広い空間に出

た。


そこには岩をくり抜いて作られた街が存在してい

たのだ。


まるで彫刻で出来た街を見ている様で、美しい造

りをしていた。


「すごい……」

「壮観だろう?ここにはドワーフ達の技術が詰ま

 っているんだ」

「手先が器用なんだ……こんな街並みを作るなん

 て……」

「師匠は人に見える様に魔法をかけてはいたが、

 実際はドワーフで、150年生きたんだ」

「長生き?なのかな?」

「いや、そうでもないよ。病気で亡くなったか

 らね。もっと一緒に研究をするはずだったん 

 だ……なのに」


何かに取り憑かれていた様に研究に没頭してい

ると時間すら忘れると言う。


似た者同士だったせいか、時間を忘れて色々な

研究をしたらしい。


「最期は賢者の石を作るところで……師匠に反

 対されたんだ……あれは人の手で作っていい

 ものではないってね……」

「……」


神崎もそれには同感だった。

人の命を奪ってまで作るものではない。


そんな風に作られたもので長生き出来ても嬉し

くなんかない。

そう。思わずにはいられなかった。


「それは人の命を奪うから?」

「そうだね……でも、まさかこっちの世界に来

 る時に君が死ぬとは思わなかったんだ」

「……!」


一瞬、神崎の顔色が変わる。

弘前は平然と言うが、それが本当なら、今の生

きている記憶は一体誰のものなのか……。


「死んだ?」

「その石が命だって言ったのは覚えてる?」

「あぁ……もちろん」

「その言葉の通りなんだ。僕は完成させた石を

 君に使った。身体は君の遺伝子情報から記憶

 は……僕の記憶の中の神崎くんから……」

「……」

「この世界に来た時の事は覚えていないんじゃ

 ないか?」

「……」


愕然とする神崎に弘前は淡々と話し出した。


そもそも神崎奏という人物は、すでに亡く。

弘前の手によって生み出された存在だと言うの

だ。


信じたくない事実に、ショックで暫く何もやる

気が起きなかった。


街に着くと宿屋を取り、神崎は部屋に閉じ籠っ

てしまった。


弘前の事を終始睨みつけるユニコーンに苦笑い

を浮かべると、目的の防具を頼みに出かけたの

だった。


帰って来た時には、手に硬いパンに肉が挟まれ

た食べ物を持って帰って来ていた。


部屋は真っ暗で窓すら開けなかったらしい。


「神崎くん、食事置いておくよ。」

「……」

「ユニコーン、いるんだろう?これを……」


そう言うと中から出て来たユニコーンに食事の

包みを渡したのだった。


器用に咥えると主人の元へと持っていく。


食べてくれるかは微妙だが、それでも神崎の身

体は食事を取らなくても生きてはいける様に出

来ている。


ただ、心配なのは精神面だった。


だが、知っておいてもらわねばこれからやる事

に支障が出ると思い、話したのだった。



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