第十一話 弘前の師匠
ダンジョンコアを見つけると、早速手に取るとダ
ンジョン自体が崩壊を始めた。
「さぁ、早くここを出ようか」
「……うん…」
少し元気のない神崎を心配そうに眺めたが、今は
脱出が先と思ったらしい。
何も聞いてはこなかった。
「このあとは東の国に行きたいところだけど、そ
の前に王都の南に行こうか」
「あぁ、そういえば前に行こうとしていたところ
だよね……」
「そう。あそこは魔素が多く、ダンジョンの強さ
もなかなかなんだよ。代わりに騎士団の強さも
しっかり訓練されていて、ルイーズ伯の兵は、
王都の騎士とは比べものにならないらしいよ」
「強いんだ…よね?」
「そうだよ。でも、たかが騎士だよ。魔法使いに
は弱いよ」
弘前からしたら、脅威ではない。
そう言いたいらしい。
「すぐにいく?」
「いや、その前にこの近くのドワーフの里に行こ
うと思うんだ。森は焼け野原にしちゃったけど、
そのおかげで丸見えになったあの山だよ」
「山?」
「そう、あそこの中腹に空洞があって、そこを進
むと、そこにドワーフ達が住む里に繋がってい
るんだよ。そこで防具を作ろうと思ってね」
弘前は今まで集めた素材で一番硬い素材を取り出
すとこれで作って貰うんだと言う。
「これってさっきの虫の外装?」
「そう、でも、これは火にも耐性があってね〜そ
れに表面は物理耐性が強いんだ。神崎くんのユ
ニコーンが重力で中身を潰さなければ、本当は
強敵だったんだよ」
「……」
それだけユニコーンがどれほど強いかを、再認識
させられたのだった。
歩くこと、数時間。
歩きやすくなった山道をひたすら歩き続ける事に
なった。
『主、背中に乗ってもいいんじゃぞ?』
「大丈夫だよ。心配しないで…」
「僕はぜひ乗せて貰いたいけどな〜」
『何故我が乗せるんじゃ?主だけなら構わんが、
お主を背に乗せるなぞ、冗談じゃないわ』
「僕はえらく嫌われたみたいだね〜」
「そう言う冗談ばかり言ってるからでしょ?」
神崎は呆れる様に弘前とユニコーンとのやり取
りを聴きながら黙々と歩いた。
やっとのことで山の中腹まで来ると、そこには
ぽっかり空いた洞窟があった。
「ここかな?」
「そうそう、前もこんな感じだったんだよ。懐
かしいな〜、昔師匠に連れられて来たんだ」
弘前は懐かしむ様に先へと進む。
足取りはしっかりしており、迷いがなかった。
本当に知っている様だ。
「師匠ってどんな人だったの?」
「あぁ、師匠は先代賢者だった人で、僕を育て
てくれた親代わりでもあるんだ」
「へぇ〜……」
「まぁ、あの時は夢の中だったけど、こっちの
世界に来た事でこっちが現実になったけどね」
なんだか嬉しそうに語っていた。
懐かしい思い出でもあるのだろう。
知識の全てを授けてくれた相手なのだ。
賢者の知識は、全ての理に通じる。
そう言われるほどに、尊い者だと言う。




