第十話 この先の未来
一緒にボス部屋まで向かうと、そこには死体とな
った魔物の残骸が残されていた。
もう少ししたらダンジョンに吸収される寸前だっ
たのだ。
魔石はさっきユニコーンが咥えて持って来たので
あとは蜘蛛型の魔物の尻についた糸の出る機関を
取って持ち帰るくらいだった。
「これって食べれるとか言わないよね?」
「これは無理だね。ただ素材としては皮膚が硬い
外殻で覆われているから防具の材料になるのと
お尻についた糸を生成する部位も高く買い取っ
て貰えるはずだよ」
「………そっか………」
弘前のアイテムボックスも限界はある。
ましてや、神崎は作って貰ったアイテムバッグの
容量しか入れられないのだ。
となれば手に持って帰るしかない。
「サンドワームの時みたいに入らない?」
「それは無理かな、さっき魔石を大量に入れてる
し、ここにくるときに色々買い込んだでしょ?
それも全部入っているんだよ?」
そういえば、と思い出す。
珍しいものは手当たり次第に買い込んだのだった。
それも、そのはず。
ギルドに持ち込んだ料理レシピが全部先に登録し
た人がいたからだ。
こうしてはおれんと、躍起になって他のものを挑
戦するんだと張り切って買ったのだ。
それがアイテムボックスの容量オーバーの原因だ
った。
「剥ぎ取って、持ち帰るしかないね」
「触るのかぁ〜……」
「……」
二人して顔を見合わせると苦笑いを浮かべたのだ
った。
結局じゃんけんで決めた。
弘前は嫌々部位を切り取るとリュックに詰める。
全部は入らないので、高く買い取って貰えそうな
部位に絞った。
奥の宝箱は手付かずだったので、神崎が開けてく
る。
「これって……」
防具と一緒に入っていた装飾品はブレスレットと
鈍色に光る石だった。
手に取るとすぅっと消えていく。
胸の辺りがポカポカと温かくなった気がした。
「やっぱりこれ……そうだよな……」
さっきのがカケラの一つなのだろう。
自然と神崎の中へと入っていった。
「あと5個か……」
弘前を眺めながら、自分の胸に手を当てたのだっ
た。
この命は仮初のもので、ただ生かされているのだ。
どう言うわけか、弘前は星の雫を完成させようと
している。
もしそれが完成したら……。
一体何が変わるのだろう。
それとも、普通に人として生きていけるのだろう
か?
神崎自身は、長く生きたいわけでも、不老不死に
なりたいわけでもない。
ただ、普通に生きていたかっただけだった。
ふと、さっき森で拾ったカードをポケットにしま
ったのを思い出した。
手に取ると、そこにはどうやって生きて来たのか
が書かれていた。
生きた証を残したのだ。
では、自分は一体何を残せるのだろう。
元の世界にも帰れず、ここで命朽ちていくのなら
いっそ、後悔しないような生き様を送れるだろう
か?
神崎がまっすぐ見つめる先には、さっきまで毛繕
いをしていたユニコーンがいた。
自分を慕ってくれる獣。
ずっとそばにいてくれる存在。
それは神崎の孤独に、寄り添ってくれる唯一の存
在となって行くのか?
頼もしく、勇敢で、気遣いの出来るそんな存在だ。




