第九話 苦手な種類
少し休憩を取ってから、再び歩き出した。
所々に目印が書かれており、迷子にならない様に
といった、ユニコーンからの配慮だった。
「こう言う時、契約しててよかったぁ〜」
「確かに、いなかったら今頃、僕たちのどちらか
が率先して倒しに行ってたんだからね〜」
「それは………諦めてもいいかなって……」
弱音を吐く神崎に、弘前も考えないわけではなか
った。
いくら進んでも、魔物は出てこなかった。
点々と魔石が転がっており、それも凄い数だった。
ある意味、ここにも虫の大群がいたのだと理解さ
せられた気がした。
「やっぱりここにも…?」
「そうだろうね、ここのダンジョンはやっぱり…」
「俺…帰りたいかも……」
「でも、神崎くんの契約獣がいい仕事してくれて
るおかげで鉢合わせなくて済んでるし、いいん
じゃないかな?」
「まぁ、そうだけど……」
どんどん進んでいく。
どれだけ降りて来た事だろう。
ただ歩くだけと言うのもつまらないものだった。
魔力感知も反応はすでに遥か下の方だけだった。
大きな魔力の波動は、きっとユニコーンだろう。
その周りの小さな魔力反応がここの倒すべき敵
だろう。
感知できても数が多すぎて、数える気にもなら
ない。
そして完全に小さな魔力反応が消えると、もの
すごい勢いで大きな魔力反応がこちらに向かっ
て来ていたのだった。
向かって来た魔力はいつも隣で感じるものだっ
た。
「ユニ、おかえり〜」
『主よ。こんな小さなものが苦手なのか?』
「う〜ん、どうしてか背筋がぞくぞくしちゃっ
て〜、ユニは苦手なものはないの?」
『あるぞ?もちろん人間じゃ。好き勝手住処を
荒らしておいて追い出せば人数を増やしてま
たやってくるんじゃからな』
「あ……なるほど……」
冒険者達の事を言っているらしい。
確かに、フロアボスであったのなら倒して先に
進むか魔石狙いで戦いを挑むことはあるだろう。
コテンパンにやられれば、今度はその対策をし
て再び挑んだであろう事が容易に想像できた。
「大変だったね…」
『まぁ〜そうじゃが……主は別じゃ。気に入っ
ておるからのう』
「それは嬉しいな…」
ユニコーンの頭を撫でると小型サイズに戻って
いた。
『この先全部始末しておいたぞ』
「それは助かるよ…ありがとう、今日は美味し
いものいっぱいつくらないとだね」
神崎はユニコーンを腕に抱え上げると抱きしめ
た。
『あ…あるじっ……』
「なに?ユニは可愛いな〜」
『……///////』
魔物でも照れる事はあるらしい。
実に可愛かった。
そして、ユニコーンの口に咥えられていた魔石
を受け取ったのだった。




