第七話 世界樹のダンジョン
焼け野原となった大地を眺めると、遥か向こうに
大きな影があった。
エルフ達の集落だろう。
とすれば、あの大きな影は世界樹の木ではないだ
ろうか?
今は焼けこげて輪郭しか残っていないが、かろう
じてたっているという感じだった。
「これは……大きな木があったんだね」
「多分、エルフや精霊の宿り木だったんだろうね」
弘前は平然と言ってのけた。
焼き払われた大地には草一本すら生えていなかっ
た。
「あれは……なんだろう……」
「よく見つけたね。さぁ、行こうか」
神崎が不思議と思った場所は焦げた大木の根本の
方だった。
ぽっかり開いた場所はまるで何かの入口の様に見
える。
「ここがダンジョンの入口?」
「そうだろうね。人間達の立ち入りを許さないの
も、世界樹の根元にあるからだったんだろう」
「どうして根元だとダメなの?」
「それは、エルフ達にとって、この木は神聖なも
のだからじゃないかな。ダンジョンから溢れる
魔素を吸い取って、清浄な空気に変える。そん
な力を持つ世界樹にイタズラでもされたら困る
とでも思ったんじゃないかな。現に世界樹の葉
は最高級の回復薬の元になるし、雫は万能薬と
して販売されるほどだからね」
万能薬とは、どんな症状にも効くとされている、
最高の薬だった。
回復薬は傷や怪我を治す補助として使われる。
ポーションを飲んで回復をかけるなど、同時に使
う事が多く知られている。
だが、万能薬はそれだけでなんでも治してしまう。
聖女が祈りの力を使う時も、ポーションを同時に
使うとされている。
一部のエルフが教会へと世界樹の葉を献上してい
るせいか、聖堂の奥の泉には世界樹の恵が染み込
んでいると言われている。
「そんな凄いものだったの?」
「もうただの枯れ木だけどね。これから聖堂へ
世界樹の葉が届けられる事は無くなった訳だ」
弘前は何がおかしいのか笑い出した。
聖女の力も、もう底が知れて来たも同然だったか
らだ。
「これで教会も終わったも同然だと言う事だよ」
「……?」
「さぁ、奥へ行ってダンジョンごと消してしまお
うか!」
狭い通路の先へと進むと、やたらと開けた場所に
出た。
そこには何もなく、ただの行き止まりの様に見え
た。
「先はありそうだけど……」
「うん、先に通路がある……でも、ぱっとみ見え
ないのはどうしてだろう……」
考えていると、ユニコーンが神崎の前に出た。
『来るぞ!油断するでないっ!』
その言葉の通り、真上から無数の虫達が降りて
来ていたのだった。




