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第五話 生きた精気

エルフにとって一番大事なのは精霊で、その住処

であるこの広大な森は大事な育成場所だった。


もし木々を焼き払えばどうなるか?

それは木から出る精気を吸って生きている精霊達

が生きていけなくなる事に等しかった。


リーダー格の男は、必死に抵抗を試みたが、束縛

された縄を切る事もできず、ただ無様に地面に転

がっているだけだった。


「この辺り一面焼け野原にしたらどうなるのかな

 ぁ〜?」

「そんな事してみろ、里の精鋭達がお前らを許さ

 ないだろう」

「ふ〜ん。どう、許さないのか教えてくれる?」


弘前は不適な笑みを浮かべると杖をとりだした。


「黙って見てればいいよ。君が話さないせいで

 全てを失うんだ。そう、これは全部君のせい

 なんだ……」


そう言うと、杖をかざし振りかざす。


「メテオフォール!」


まるで隕石のような大きな燃え盛った岩が辺りの

空をうめつくしていた。

弘前は炎は得意ではない。

だが、魔道具を使えば、火の上魔法も使う事がで

きる。


肥大した炎を纏った岩が空一面に浮かび上がった

と思うと、一気に地上へと落ちて初めたのだった。


「なっ………馬鹿な……やめろ、やめてくれ…」

「もう〜遅いよ、君が選んだ未来だよ。はっきり

 目に焼き付けておくといいよ、いきなり攻撃し

 てきた罰としてね」


確かに森への侵入は悪いとは思うけど、いきなり

殺しにかかるのはよくない。


お互い歩み寄りは必要だ。


「脅したしそろそろいいんじゃない?」

「神崎くん。こう言う事はしっかりやっておかな

 いと、のちに禍根を残す事になるんだよ。」

『主、こう言うことはケジメが大事じゃ。どちら

 が立場が上かを示さねば同じ事が繰りかえされ

 る事になるぞ?』


ユニコーンですら、慈悲など必要ないと言ってい

る様だった。


「そうだ、この近くにダンジョンがあったはずで

 したよね?どこか分かりますか?」


弘前は思い出したかの様に言う。

縛られたままのエルフの青年は顔を真っ赤にする

と今にも噛みつきそうなくらいに怒っているのが

分かる。


「貴様らに神聖な場所を教えるとおもうか!」

「そうですか、では……焼け野原から探すとしま

 すか」

「おい、マジで……やめくれ……」


弘前の本気を目にした瞬間だった。


轟音が響き渡り、木々の悲鳴が聞こえるようだっ

た。


さっきまでいた森はもう跡形もなく、燃え尽き

たのだった。


たった魔法一発。

これが弘前という名の賢者の力なのだ。


全ての魔法を習得し、どちらの世界の知識も

持った今代の賢者。


数人いる賢者の中では異質な存在だった。


「森が……みんなが……」


呆然と眺めるエルフの青年は真っ青な顔をして

項垂れたのだった。


「神崎くん、そいつの首根っこを掴んで貰える

 かな?」

「ん?こうかな?」


抑えるように座ったまま項垂れている青年の首

に手を当てた。


その瞬間、氷でできた柱が地面から串刺しにし

たのだった。


一瞬驚いて手を離しそうになった。


だが、意外と、しっかり握っていたせいか離さ

ずに済んだ。


すると、何か暖かいものが流れ込んできた感覚

がした。


「康介……これは……」

「生きたままの生気と言うべきかな。精霊が精

 気を吸うように、神崎くんはこうやって死に

 際にその者の寿命と魔力を全部受け継ぐ事が

 出来るんだよ」

「……」

『さすが主、見事じゃぞ魔物も、死んだ魔物を

 食べて魔力の補給をするんじゃ、それと一緒

 じゃな』

「まぁ、そう言う事かな……」


弘前は軽く言ったが、実際には殺してその人の

寿命を貰うと聞こえていた。


確かに、魔石を食べると言う事は同じ事なのだ

ろう。

だが、人の形をした者から、直接奪うのは初め

てだった。


「うぅ……おえっ……」

「神崎くん?」

「こんな……こんなのおかしいよ……」


まだ神崎にとっては現実を受け入れられそうに

はなかった。


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