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第七話 もう一人の自分

マッピングを手に入れてから迷うという事が無く

なった。

領主の屋敷に週一で呼ばれるのだが、目的地まで

の最短ルートが表示される為に、迷いなく行く事

ができた。


それまで散々迷っていたせいか、細かい道や部屋

まで表示されていた。


神崎が攫われた時に使われたであろう裏門までの

ルートも地図に記載されていた。


「う〜ん、迷子にならなくなったのはいいけど…

 これは……」

「奏、どうかしたのか?」

「いや、なんでもないよ。今日はポーションの納

 品分と、新しいレシピについてだったよね」

「えぇ、領主様が口の硬いギルド職員を呼んでい

 るとか」

「うん、分かった。ナルサス…いつもありがとう」


どこに行くにもついてきてくれる。

そばにいるだけで、安心できた。

初めての奴隷であり、友人のような存在だった。


「奏が心配する事はないです。俺はいつでも奏の

 為なら命すら投げ出す覚悟は出来ていますから」

「冗談でも、そんなことを言うのは許さないから。

 俺はナルサスにも幸せになって欲しいって思っ

 てるんだからね!」


いつも、神崎を一番に考えてくれるのは嬉しいが、

それはあくまでダンジョンでの事で、それ以外で

は好きにしてて欲しいと思う。


最近はいつも気を配ってそばにいてくれるし、寝

付きが悪いと、一緒に側で寝てくれる。


エリーゼには指摘されて怒られたが、本当は一人

はちょっぴり寂しい。


攫われた時の恐怖は、知らず知らずのうちに蝕ん

でいるらしかった。


夜になると、眠れない事がよくあったからだ。


それを、察知してナルサスが自主的にそばにいて

くれていたのだった。


「あのさ……夜の事なんだけど……」

「大丈夫です。眠るまでそばにいます」

「……うん」

「一緒に寝ていると、見つかった時に次は言い訳

 できそうにないですからね」


苦笑いを浮かべるナルサスに、申し訳ない気がし

た。


「そんな顔をしないでください。逆に俺のベッド

 に来てくれれば、問題ないんですけどねw」


笑いながら言うナルサスに神崎はハッと顔を上げ

た。


「行っても…いい?」

「えぇ、勿論」


ナルサスは絶対否定しない。

神崎のやりたい事には、これまで反対した事など

一度だってなかった。


領主様は神崎の言葉を全面的に支持してくれた。

レシピも再現されたものを目の前にしながらギル

ド職員と検討したのだった。


「これは非常にいいですね!こんなものを考えつ

 くとは本当にすごいお人だ!まだ幼いというの

 にどこからこんな知識が湧くのが疑問ですな!」


書面でレシピの重複売りなどを禁止させると書面

に捺印と契約魔法をかける。


それは全部領主の目の前で行われた。


どちらにも不正が無い事を証明する為だった。


「そういえば、イビルの国のギルドが不思議な事

 を言ってきたんですよ!それもカナデさんのこ

 れまでに出したレシピと同じものを登録しよう

 とした人間がいるとね。それが、ギルド登録名

 が、なんとカンザキカナデと言うらしいとね」

「それは……不思議ですね?」


一瞬ドキリッとした。

もしかしたら、もう一人自分がいるのではないか

と疑ってしまう。


長野達を見ていた思った事だった。

彼らは姿形が変わる事はなくこっちにきている。

では、自分は一体どうして姿が変わってしまった

のか?


もしかしたら、本当は自分は偽者で、本当は神崎

奏は生きているのではないかという不安がよぎる。


呆然とする神崎の横で、ナルサスは平然と言って

のけた。


「それは誰かの悪戯でしょう?奏は奏で、何者に

 も変え難い存在なんです」

「それもそうですな!こんな色々な知識がある人

 間がそうそういるわけがないですな!それと、

 もう一つ、ダンジョンが各地で消えていると

 言う噂ですな!イビル国には3つの大きなダン

 ジョンがあったのですが、それの全部が消失し

 たと言うのです。それもその冒険者が入った後

 にです」


それが、本当なら確実に何かをやったという事だ

ろう。

だが。証拠がない。


そもそもダンジョンを消すほどの何かとがなんな

のか!

隣国の賢者が一つの仮説を発表したという。

それはダンジョンがダンジョンであるが故の根本。

ダンジョンコアが破壊されたのではないかと言う

事だった。


誰も見た事のないコアの存在は賢者の間では有名な

仮説だったという。


西の賢者が弟子と共にそれを警鐘して賢者の中では

コアを探す者もいたと言う。

しかし、賢者は賢者。

強いわけではない。

知識を持っているだけの頭でっかちの学者に過ぎな

いのだ。


ただ一人を除いては……。




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