第三話 クエスト
今日は、久しぶりにエリーゼを交えてギルドの依
頼を見に来ていた。
「ダンジョン攻略もいいですね〜、久しぶりだし」
「あぁ、そうだな。最近は団長が帰ってきたせい
でなかなか一緒に行けなかったからな〜、カナ
デが屋敷をでて行ってから本当に寂しかったの
だぞ〜?」
エリーゼや兵士達と会う機会はめっきり減った。
そのせいか、兵の士気が落ちているという。
「そんな事ないですよ〜。ナルサスもたまに訓練
に行ってるんでしょ?」
「そうですね〜、やっぱり元気はないですよ?奏
がいた時は結構張り切っている兵も多かったで
すからね〜。ほら、良く見学に来ていたでしょ」
「あぁ、確かに……」
本当はナルサスに食事を届けるついでに、見学し
ていたのだ。
ナルサスは奴隷であって兵士ではない。
だから、食事もしっかり取れていない時が多かっ
た。
それを知った神崎が毎回差し入れを持って来るよ
うになったのだった。
それ以来、神崎を見た兵士達が良く撫でたり、抱
きしめたりとスキンシップが増えたのだ。
だが、エリーゼがいる時は静かだった。
エリーゼの可愛がり様は極端だったからだ。
過保護過ぎるのだ。
そして今も、ギルドで依頼を見て迷っていた。
「エリーゼさんはどれがいいと思いますか?」
「そうだな〜、人数もいるし、これなんかどうだ
ろうか?」
エリーゼが手に取っていたのは、少し距離はある
が、行けない距離ではない場所のダンジョン調査
だった。
最近活性化されたダンジョンで、少し場所に問題
があった。
荷馬車で行くには途中狭くなる為、どうにも歩き
でしか登れない場所にあるのだ。
難易度が少し高めというのもあった。
「少し難易度高いですが、大丈夫なんですか?」
「まぁ、多分だが土龍の住処だろうな…」
「土龍?それってドラゴンですか?」
「いや、何を想像しているかわからんが、飛べな
いただのトカゲだと思えばいい」
飛べないトカゲ……。
エリーゼの表現にプッと笑ってしまったのだった。
神崎のバフの中に炎耐性というのがある。
しばらくだが、炎の中にいても平気になるものだ
った。
それさえあれば問題なくクリアできそうだと考え
たようだった。
今ではパーティーも5人となっている。
前衛を二人がつとめてくれるおかげで、後ろから
援護に当たる。
その為、最近ナルサスには中盾、ケイヒードには
身動きを邪魔しない程度の小盾を買い与えたのだ
った。
勿論、ただの盾ではない。
魔法付与が付いているものだった。
ラナには杖と革鎧を買い与えた。
すばしっこい獣人族には鉄の鎧では俊敏さを損な
ってしまうのだ。
本人の希望とあって、特注で作成を依頼したもの
だった。
変わってナルサスには軽い金属で作られた鎧を装
着して貰っている。
「この鎧、軽くて使いやすいです」
「それならよかった。じゃ〜行くよっ!」
目的地まで、数回にわたって魔物の襲撃を受けた
のだった。
馬車を順調に走らせると、目的地の側まであっと
いう間だった。
「ここからは歩きだな……」
「では、奏。これも鍛錬になるので」
「へっ……ナルサス!?」
いきなりナルサスに抱き上げられると、真っ赤に
なって驚いてしまった。
山へ登るのに、人を担いで行くなど聞いた事がな
かった。
訓練になると行っても、最近ちょっと体重も増え
てきているのだ。
「重くない?俺、自分で歩くよ?」
「大丈夫ですよ。奏は軽いので。」
ニッコリ笑うこのイケメン男のテンポに抗う事は
出来なかった。
エリーゼはそんな神崎達のやりとりが気に入らな
い様で、少し不機嫌だった。
それでも、神崎の足では時間がかかってしまうと
いうのも事実で、ナルサスの判断は間違ってはい
なかったのだった。




