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第五十話 圧倒的な力

水の壁の中から、飛び出すように出てくる氷の礫。


光の盾が一瞬のうちに出来ると神崎の前を塞いで

いた。


「チッ……弘前か…」

「ナイスアシスト。今のはあきらかに殺すつもり

 でやって来たよな?」

「当たり前だろ?俺らはイライラしてんだよ。今

 ここでなぶり殺しにすれば気が晴れると思うか 

 らよぉ〜」

『主、我がやろう。契約獣として主を害しようと

 する者を生かしておく必要はないじゃろう?』

「ユニ、それは……」


上島が鼻を鳴らすように笑った。


「そのちっこいのが戦うのか?せめて神崎、お前

 が戦えよ?強いなんてどーせ嘘なんだろ?」


長野は後ろで剣を抜くと上島の魔法と同時に走り

出していた。


「長野は俺がやる。ユニ、もう一人を頼む」

『心得た!』

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ!」


上島の前にいきなり飛び出すと、小さな身体を

ピンッと張った。


その瞬間、重力がかかり上島の身体は地面にめ

り込んだのだった。


その頃、長野の剣を真っ向から受けた神崎は剣

に魔力を纏わせると力勝負になっていた。


身体強化も含めて、神崎の方が有利だった。


「くっ……なんで……」

「大口を叩く割にこの程度なんだな?こちらの

 世界でも、人に対して見下すような態度を取

 ってるんだな……」

「煩いっ!お前に何が分かる?俺は……この世

 界に選ばれた人間なんだぁ!誰もが俺にひれ

 伏す、それが当たり前なんだよ!」

「違う!人はみんな平等で、誰かを見下してい

 いものじゃない。」


鍔迫り合いをしたあと、一気に押し戻したのだ

った。


後ろによろめく長野に向かって懐に飛び込むと、

目の前に炎が上がった。


魔法を水で吹き飛ばすと、再び剣を振り下ろした

のだった。


どの属性も使えるのは神崎くらいだろう。

多くの知識を有する賢者とて、全部の属性を扱え

てはいても威力はなかった。

ただ使える程度では戦闘時には何の役にもたた

ない。


だが、神崎は違っていた。攻撃魔術に関しては、

すぐに覚えたし、使いこなすことができた。


「こんなもんか?」


さっき長野が使ったように、神崎も炎を手に宿すと

一気に放ったのだった。


さっきの長野の威力とは桁違いだった。


「うわぁっ!う……嘘だろ……」


信じられないほど威力が違っていた。

それもさっき水属性を使っていたというのに、

今度は炎ときた。


テイムしていると思われる従魔でさえも一筋縄

ではいかない相手だった。


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