第四十九話 弱いの意味
ズカズカと足早に向かうと、むこうもこっちに
気づいたのか、目を細めてきた。
「よぉ!元気だったか?神崎…」
「君は……長野と…上島か…」
予想外の再会に空気がピリピリとする。
「ここで会えるとはな…ちょっと久しぶりだし話
でもしようぜ?」
「悪いが、暇じゃないんだ。俺らはこの国を出る
予定なんだ…」
「俺らは今来たところなんだ。ちょっとくらい付
き合えよ?元クラスメイトだろ?」
「それは、自分がやってきた事を謝罪でもするの
か?」
神崎の言葉に少し間が開くと、長野は笑い出した。
「謝罪?弱い奴を殴って何が悪いんだ?それとも
謝罪して欲しかったのか?」
一瞬殺気だった視線が横からする。
「おい、お前の連れは礼儀がなってねぇ〜ようだ
が?」
『主よ、今すぐ噛み殺しても構わぬか?』
「それはやめよう。ここでは目立つよ」
足元で小さな獣が威嚇していた。
「なんだこれは?ポニーでも連れてんのか?お前、
それを使役して戦ってるのか?ダッサ!まじダ
ッセー」
上島が笑いながらバカにする。
ユニコーンの怒りは徐々に膨れ上がっていく。
その横で、フードを深く被った青年は顔を見せた
のだった。
「やぁ、また僕にやられに来たのかと思ったよ」
「なっ!弘前!テメーここで会って生きて帰れる
と思うなよ!」
上島が剣を抜こうとした瞬間、後ろから一緒に来
た傭兵から叱責を受ける。
「おい、ここはギルド内だ。喧嘩は御法度だ!」
「お……おう」
おとなしく引いたが、ギルドを出ればそうは行か
ないと視線が言っていた。
「そうだ、神崎くん。このあとちょっと食事でも
行こうよ」
「でも、すぐに出るんだろ?」
「うん。でも、少しくらいなら時間はあるよ。ち
ょっと遊んであげる時間くらいはね」
「言ってくれんじゃねーか?やってやろうじゃね
ーか?覚えてろよ」
血気盛んな上島に次いで長野もついていく。
弘前は機嫌良く歩き出したのだった。
向かった先は、人気のない森の中だった。
「ここならいいかな〜」
「おい。弘前、俺らから奪った石を返せよ!」
「ん〜、もう使っちゃったからないけど?そんな
に欲しかったら、倒して奪いなよ?出来たらだ
けどね」
「康介、そんな挑発して……」
「大丈夫だよ、だって弱いもん。神崎くんならす
ぐに倒せるし?」
弱い。
その言葉に、格下だと思っていた女騎士と顔だけ
がいいイケメン。そしてまだ幼い少年に負けた事
を思い出した。
あれは負ける事のない決闘だった。
そのはずだっただけに、悔しくてたまらなかった。
「神崎ごときが、俺らに勝てるとでも思ってんの
かよっ!」
上島が一気に魔力を練り上げると一気に水の柱が
沸き起こった。
その後ろで氷を尖らせると不意打ちのように発射
させたのだった。




