第四十六話 連携プレイ
アンデッド系モンスターが出るダンジョンのボス
は決まってアンデッドが多いと言われている。
したがって、ここのボスはリッチかレイスの可能性
が高いとされていた。
そもそも、ここはあまり人が踏み入れなかったせい
か、モンスターで溢れかえっていたのだ。
そしてそれをユニコーンが一掃した。
もちろん魔石も沢山手に入ったが、美味しくはなか
った。
腐ったような臭いの為、口に入れるのを躊躇ったほ
どだ。
勿論食べたけど、美味しくはない。
「うげっ……これ全部食べなきゃダメか?」
「もちろん、売ってもいいけど、強くなるなら食べ
た方が簡単かな。」
弘前に言われると、渋々半分だけ食べ切ったのだっ
た。
残りは帰ってからにした。
最初に入ったダンジョンのトレントやドライアドの
魔石が実に美味しかった。
あのくらいとは行かないまでも、それくらい食べれ
る味であってほしいと思っていた。
「今度はちゃんと食べれる味にしてくれよ」
「リッチは人間の成れの果てだし、期待できないと
思うけど?まぁ、さっさと行こか!」
魔法は通じる。
物理攻撃は無効。
なら、剣に魔力を纏わせれば、難なく倒せるはず…
いつしか杖を構えている弘前の横に立つと、先へと
進んだのだった。
大きな扉が開くと、中はやっぱり異臭が漂っていた。
鼻をつまみたくなるような臭いにクラッとする。
前にはボロボロのマントを被ったリッチが部屋の中
央にボロ布をひらひらさせながら宙に浮いていた。
「くらえっ!」
弘前の氷の礫が光魔法と同時に放たれる。
それに合わせて神崎は炎の壁を周りに作って逃げ
場を無くしたのだった。
そこに重力をかける。
ボロギレと化したリッチが地面に押しつぶされる
と氷の杭で磔にされた。
周りの炎を徐々に縮めれば布に火がつき、一気に
燃え始める。
声にならぬ声を発するとどこからともなくアンデ
ッド系モンスターがわらわらと湧いて出てきたの
だった。
「やっと出番か」
神崎は剣を構えると一気に切りつけていく。
アンデッド系モンスターは脆く物理ダメージに弱
い性質をもっている。
リッチとは正反対なのだ。
そんな正反対の魔物同士が共存する。
そんな空間はまさに混沌とした状態と言える。
「神崎くんは前の敵に集中!ボスの足止めはして
おくから」
「わかった!ユニ、一気に行こう」
『我に任せれば簡単じゃ』
主人に頼られるのが嬉しいのか張り切っていた。
そしてものの数分で全滅させたのだった。
すぐにボスに向き直ると、ふわふわと浮いていた
はずのリッチは今は地面スレスレにいる。
「神崎くん、魔力を纏わせれればいいよ」
「わかった!」
ユニコーンのアシストを借りながら一気に駆ける。
姿は契約した時の真っ白で美しく、元の大きさに
なっても変わらず、そして額には一本の角が生え
ていた。
契約前の真っ黒な馬の姿とは似ても似つかない。
小さな体の時には小さかった角も、元の姿になり
神崎を背に乗せると神々しいくらいに光り輝く姿
へと変貌していた。
『これも悪くはない……これが今の我の姿なのじ
ゃな』
「行くよ!」
『勿論じゃ』
神崎に言われるがまま、リッチの魔法をすかざず
避けると真正面へと突っ込んでいったのだった。




