第四十五話 ユニコーンの実力
探索は驚くほど順調だった。
一階層を過ぎて、二階層へと上がる。
魔物は倒されており、魔石だけ回収していく。
三階層でも同じ現象が起きていた。
ところどころに蹄の跡が残されており、道に迷う
事さえなかった。
「魔力探知で見つかってるのって魔石になった魔
物ばかりだな…」
「さっきは活躍できなかった分、張り切っている
んだろうな」
「うん、ユニが居てくれて心強いよ」
神崎は仲よくなった者を疑わなかった。
弘前には到底できない考え方だった。
「そうだね……」
何か企んでいるのではないか?
そう考えてしまうのだ。
階層を重ねる毎に魔石の純度も高くなって行く。
そしてとうとうボス部屋の前まで、全く魔物と
遭遇する事なく、来てしまったのだった。
大きな扉の前には自信満々のユニが仁王立ちし
ていた。
「ユニ!怪我はない?大丈夫?あんまり無理し
ちゃダメだよ?」
心配性な神崎にユニコーンは鼻を鳴らしながら
擦り寄ってしまった。
「我が本気をだせばこのくらい……あっ…いや。
これは違うぞ!ただ、いつもの習慣というか」
「よくやったね!えらいえらい!」
いつも撫でて貰えると思っていたせいかつい顔
をすりすりとしてしまっていた。
弁解しようにも、もう遅い。
神崎は何も考えずにすぐに頭を撫でてくれた。
恥ずかしそうに鼻を鳴らすと、弘前と視線が合っ
た。
あきらかに敵意を向けてきていたのだった。
「神崎くんも疲れただろう、ここで休憩してから
入ろうか!」
「そうだね、まずは腹ごしらえしてからにしよう」
さっき買った串焼きや果物を出すとパンに挟んで
行く。
手を洗う時は弘前の水魔法が重宝していた。
「はい、これは康介の分ね。そしてこっちがユニ
の分だよ。」
『我の分!それはありがたいことじゃ、これは美
味じゃな、先ほどとは違うがこれもなかなかに
美味じゃの』
「それはよかった。おかわりいるならあるからな」
『ならばいただこうかの!』
「はいはい、食べ終わってからにしろよ?」
まるで子供のようにがっつくユニコーンに神崎は
なんだか嬉しそうだった。
「この先の事だけど、きっと…」
『先におるのはリッチじゃろう。さっきからスケ
ルトンがようけおったからのう』
「……今から説明を…」
『主人よ、リッチに剣は効かぬ。魔法が唯一の
攻撃手段じゃ。炎が有効じゃな』
「べらべらと馬のくせに喋るなよ、リッチごとき
瞬殺できなければ賢者など名乗ってないけど?」
『フンッ、我は主人の安全の為に忠告しておるん
じゃよ。邪魔者はどちらじゃ?』
「この魔物ごときが……今すぐ挽肉にして食って
やろうか!もちろん魔石は神崎くんに食べても
らえるし本望なんじゃないのか?」
「ちょっと二人とも!やめようよ。仲間内で喧嘩
は良くないって、それにここは油断しないで行
こう」
結局は神崎の言葉に従うかたちで、ボスに挑む事
になったのだった。




