第四十二話 契約獣としての覚悟
最初から飛ばして行くと、すぐに最下層まで到達
してしまった。
ボス並みの強さを誇る賢者の弘前と。
ずば抜けた戦闘センスで接近戦も遠距離戦も得意
な神崎。
広範囲攻撃を主とした重力系魔法を得意な契約獣
ユニコーン。
もうこれだけで攻撃力過多といってもいいくらい
だった。
神崎のチートなところは魔力が尽きないところに
あった。
尽きないからこそ使える戦法がある。
常にマシンガンのように発射し続ければ疲れはし
ても、敵の疲労を誘い、トドメまでさせるのだ。
そのあと魔力の補給に魔石を食べる。
こんな事は魔獣同士でしか行われないと思ってい
た。
が、神崎だけは別次元だった。
魔石を吸収して魔力を上げたり、底上げする事も
できた。
たった8階層。
そう言えるのはこの二人が組んでいるからだろう
いや、二人だけではない。
エリアボスだったユニコーンも神崎と契約してか
ら、攻撃の威力も格段に上がっている。
このパーティーで攻略できないダンジョンなどあ
るのだろうか?
そう思えてならなかった。
「よし!とどめだぁっ!」
「神崎くん、お疲れ様。また強くなったね。次は
もっと魔法の連続スピードも安定させていこう
か。それと広範囲魔法に時間がかかり過ぎてる
から気をつけて」
「はいはい、はぁ〜疲れたぁ〜。ユニもお疲れさ
まぁ〜」
『我は疲れてなど……わぁっ!』
「可愛い。ユニを触ってると癒されるんだよな〜」
ぎゅっと引き寄せると抱きしめた。
小犬程度の大きさなので簡単にひょいっと持ち上げ
られると腕の中におさまってしまう。
傷さえ完全回復していれば、この様な姿は……。
だが、主人に抱きしめられるのも悪くない気分だ
った。
「そういえばユニは、ずっとこのままの大きさな
の?やっぱり元の大きさになるのか?」
『それはもう、怪我さえ完全に治れば…なんじゃ
不満か?』
じっと見つめられると、むず痒くなる。
「そうじゃないないけど、ユニはこのままのが可
愛いなって思ってさ」
『我が可愛いじゃと?我は、これでもダンジョン
を守護するエリアボスじゃぞ?』
「うん、わかってる。それを勝手に連れて来ちゃ
ったんだよね……」
『いや……それは我が勝手について来たわけじゃ
が……』
「戻りたいの?」
『……違うぞ、決してそんな事はないぞ。我も外
の世界に出てみたかったんじゃ、それにあの、
ほれ、さっきの食べ物。あれがもっと食いたい
からの』
「サンドイッチ?いいよ、帰ったらいっぱい作ろ
うか?」
このどこまでもお人よしな主人はいつまで一緒に
いられるのだろうか?
人間の寿命など知れている。
魔物とてそう長くはないが、人間ほど短命でもな
い。
いつかは死別するとわかっていても、それでもそ
の時が来るまで見守って行く事を決めたのだった。




