第四十一話 欲にまみれた貴族
話はついたのか、終始にこやかな貴族の男の指に
はいくつもの大きな石のついた指輪がはめられて
いた。
首にもジャラジャラと金色に光る首飾りをしてい
る。
まるで似合っていない。
だが、本人は税を尽くした飾りだとでも思ってい
るのだろう。
話が終わって、弘前が戻って来た。
「さぁ、行こうか」
「賢者様、まさかとは思いますが、お二人で行く
のですか?もしよろしければうちの私兵を連れ
て行ってはいかがですかな?」
「いえ、結構です。彼がいれば問題ないので……」
「……」
弘前が変な言い方をしたせいか、ジロジロと見定
めるような視線で見られたのだった。
「初めは一番近い場所から行こうか」
「……うん」
なんとも言い難い視線に、居心地が悪かった。
それでもダンジョンまで来れば、数人の兵士しか
ついてはこなかった。
「もう、案内はここまででいいですよ」
「いえ、賢者様に何かあれば国の大事ですから奥
までご案内する様に仰せつかっております」
弘前は悩ましげな顔をすると、大きなため息を吐
いた。
「ここまででいいと言ってますよね?」
殺気とも取れる魔力を強めると、兵士は言い淀み
ながらついていくことに戸惑った。
圧がすごいのだ。
こんなのを真っ向から受ければ、いくら訓練され
ているとはいえ、流石にさからえないようだった。
「ここで待っていても……」
「いえ、屋敷に帰っていてください。時間もかか
りますから……そうだ明日いえ、明後日にこち
らに迎えに来てくれますか?」
「はい、分かりました……」
気まずそうな顔をしながら戻って行った。
「まぁ〜ったく、なんであんなに監視したくなる
んだかな〜」
「賢者様だからじゃねーの?」
「神崎くんまでそういう言い方はしてほしくない
な〜」
弘前はいくら賢者という称号が高い地位を表すと
言っても、所詮はただの称号だった。
「神崎くんから見たら、ただの知識があるだけの
人間だよ」
「そんな事ないだろ?魔法も、武器の使い方もス
キルの活用方法も、全部康介は教えてくれただ
ろう?これでも俺は感謝してんだぜ?」
少し驚いた様な顔をしたが、すぐに嬉しそうに俯
いたのだった。
「そんな……僕は神崎くんさえいればそれで……」
少し照れる様にいうが、その時には神崎はダンジ
ョンの中へと入ろうとしていた。
「サクサクいくんだろ?」
「あ…あぁ……そうだね」
『邪な感情とは醜い事じゃな』
「野生の動物に言われたくはないかな」
『何をぉ?』
「ユニ、康介、いくぞ〜」
神崎に呼ばれると、行かないわけには行かない。
たかが魔獣だったが、人間の感情を理解出来る、
そんなユニコーンなのであった。




