第四十話 貴族との交渉
ダンジョンを出て、暫くすると入り口が瓦礫で埋
まってしまった。
ダンジョンボスが倒され弱りきったダンジョンの
コアが消滅したのだから、完全にただの洞窟にな
るのは必然だった。
周りの森に住む魔物のレベルも一気に下がる。
これでは、近隣の街の収入源が減ってしまう。
が、それを今知っているのはクリアした神崎と弘
前しか知らない。
中に取り残された冒険者達はいきなりの魔物の消
滅に慌てて出口へと殺到した。
そして塞がっている出口を開通させると、ギルド
に事情を話に行くだろう。
そのうちに弘前と神崎の二人は残りのダンジョン
へと向かった。
「貴族の所有しているダンジョンだっけ?」
「そう、ここは金銭を払わないと入れないからね」
「でも、結構かかるの?」
「それは交渉次第かな〜」
弘前はさっきのダンジョンで換金したお金を持っ
て向かったのだった。
門番に何か話した後でお金が入った袋を見せた。
すると、兵士達に数枚の金貨を握らせていた。
するとすぐに通された。
中に入ると煌びやかな部屋に通されたのだった。
「これはこれは賢者様がお越しくださるとは……
今日はどういった要件で?」
「えぇ、こちらが所有しているダンジョンへ入ら
せて欲しいのです。こちらが今出せる全財産で
す。お納めくだされば幸いです」
弘前がへりくだって言うと、貴族の男は笑いなが
ら金貨を受け取っていた。
「そんな事でしたら、構いませんよ。いくらでも
使ってくださって構いませんよ。なんならどち
らを行って貰っても構いませんよ」
「それはありがたい。では、これなどいかがです
か?命の水と呼ばれる寿命を伸ばす秘薬です。
満月の夜に一気に飲み干すと、エルフ同様百年
は生きられるという代物です」
嘘っぽい言葉を並べ立てる弘前を眺めながら、神
崎はつまらなそうにしていた。
『主人は信じているのか?』
「ん?あの秘薬の事?どうだろうね〜俺が不死身
ってのが事実だし、あるのかもしれないけど…」
『けど……なんじゃ?』
「多分、康介はあんな人には渡さないと思うかな」
あんな人とは金の奴隷になった人間の事だった。
この貴族は金にうるさく、街の収入源を基に高い
関税をかけているという噂だった。
それに冒険者にはそれなりの税をと提言している
という。
命をかけて素材を取ってくる冒険者達にはあまり
にも過酷な事だろう。
弘前はそんな人間を好きではないはずだった。
どこの世界にも必ずいるのだ。
金と権力にまみれた様なそんなやからが……。
そんな奴に屈したくない。
それは日頃から神崎が思っていた事だった。




