第三十八話 ダンジョンコア
ダンジョンをクリアしてしまえば後は外に出る
召喚陣の上に乗れば外に出られる。
普通ならそうやって出ていくのが普通だった。
だが、彼らは違っていた。
「さぁ、奥に行こうか」
「ダンジョンコアだね」
「そう、正解。いっそコアももらっていこうか」
「ユニ、行くよ〜」
それもいたって普通の会話をする様に奥にいく。
ダンジョンコアが剥き出しになっている事は滅
多にない。
そもそもダンジョンコアはダンジョン内からは
繋がっていない事が多く、冒険者が見つけられ
る確率は極めて低い。
管理者権限のない場合、普通なら辿り着けない
はずなのだ。
なのに、弘前はまるで知っているかの様な足取
りで進んでいく。
何もない部屋に入ると、いきなり壁を魔法で吹
き飛ばしたのだった。
大きな音がして、奥には輝く石が宙に浮いてい
た。
「綺麗……これがこのダンジョンのコア?」
「あぁ、そうだよ。神崎くんが触れば終わるよ」
「俺が?いいの?」
「神崎くんの為にあるんだから」
そう言われると、少し照れながらコアに触れる。
すると、巨大な魔力が神崎の身体の中へと流れ
込んで行ったのだった。
みるみるうちにコアは小さくなって消えていく。
完全に消滅すると台座が崩れて消えていった。
「さぁ、早くでようか!このダンジョンはもう
すぐ消えてしまうからね」
来た道を戻ると陣の中に足を踏み入れたのだっ
た。
すると、最初に入った場所に出て来ていた。
『何故コアの位置が分かった?』
ユニコーンが噛み付くいきおいで弘前に問いた
だすも、答えるはずもなかった。
「それを知ってどうするの?君がダンジョンボ
スにでもなり変わるつもり?……弱いくせに」
最後に付け足した言葉はあまりにも小さく聞き
づらかった。
しかし、ユニコーンにはしっかり聞こえていた。
『主人を使って何をしようとしておるんじゃっ』
一番大事なのはそっちだった。
もし、神崎も同じ考えなら、このまま放置はで
きない。
全てのダンジョンにはコアが存在する。
それを手当たり次第消滅させられたら、魔物と
いう魔物は消えてしまうだろう。
いや、それだけじゃない。
ダンジョン周辺の魔物の力が急激に弱まるのだ。
それは同じ魔物としては感化できない事態だ。
『答えよっ!答え次第によってはこの場で始末
をつける必要がありそうじゃのう』
睨みを聞かせていると、ユニコーンの身体が急
にフワッと浮き上がった。
「ユニどうしたの?康介と何かあった?」
『主人!何故コアを吸収したのじゃ!』
「え、あれってダメだったの?康介、元に戻し
た方がいいの?」
「いや、そんな心配はいらないよ。それに、そ
んな事どうでもいいじゃないか。あの魔素の
塊は神崎くんを生かす為に必要なんだよ。そ
れとも、契約魔獣のくせに主人の命よりコア
が大事なのかい?」
主人の命よりと言われると。そんな事はない。
ただ、他の魔物達のバランスが崩れる事が心配
だったのだ。
魔物の中でも食物連鎖はある。
それが崩れれば、どんな被害が出るかわからな
いのだ。
今回のが一番わかりやすい例だろう。
サトリの力が弱まったせいでドライアドとトレ
ント達にフロアごと乗っ取られた。
そして瀕死のまま回復する機会も失っていたの
だ。
本当ならトレント達の魔力を分けて貰えるはず
だった。
が、彼らはドライアドの言うことしか聞かなか
った。
その為、回復に時間がかかり、まだ全開できぬ
為に死を覚悟した。
そのおかげで主人と出会えたのだが……。
それでも、どうにも腑に落ちない事ばかりだった。




