第三十七話 強さ
大きな扉の先はあきらかにボス部屋だった。
ユニコーンと名付けられた元階層ボスに取っては
ここは息が詰まりそうなくらいに高密度な魔素が
充満していた。
これはボスから流れ出る魔力の強さを表していた。
『油断しては危険じゃぞ』
「うん、すっごく、魔力が多いよね……」
「牽制は僕に任せて」
「なら、先手必勝!行ってくるっ!」
真正面から突っ込む神崎の後ろから高火力の魔力
が練り上げるられていた。
ボスの姿を捉えた瞬間。
氷の塊がいくつも飛んでいった。
いつのまにか豪華な杖が弘前の手に握られていた。
その杖に使われている素材は、あきらかに普通の
素材ではなかった。
巨大な体を持つ魔獣の骨と魔石で作られたであろ
う事が伺える。
『こうしてはおれぬな…我の凄さを見せねば役立
たずじゃと言われそうじゃのっ!』
弘前の魔法に合わせるように重力をかける。
さっき飛んで行った氷の柱が刺さると、それを奥
へと押し込むように重力がかかる。
魔法は、ボスの周りにだけかかる様に制御する。
その間にボスの前まで辿りついた神崎は剣を握り
しめる。
大きく振りかぶると魔力を込めた剣で切り裂いた
のだった。
ボスの姿を見てを確認する頃には、ボロボロにな
って瀕死の状態だった。
「あ、ちょっと待って。羽根を実験材料にしたい
から切り落としておいて」
「うん。わかった」
魔物だからか、遠慮はなかった。
ユニコーンももしかしたら、無傷だったらこんな
風に切り刻まれていたのかもしれない。
『もしや、我も話しかけておらねば…』
「多分瞬殺するつもりだったけど?」
弘前がいうと、洒落にならなかった。
「本当は倒して先に進もうって思ってたんだけど
理解があってよかったよ。それに、今では仲間
だしね。さっきの凄かったよ。さすがユニだね」
神崎は何かあるごとに撫でて来たのだった。
一応魔物であって、フロアボスだったのだ。
こんな動物のように扱われるなど、プライドが許
さない。
そう思っていた。
が、案外撫でられるのは悪くなかった。
今では、神崎に撫でられると、喉を鳴らしてしま
う、癖ができてしまったのだった。
倒し終わると、奥の宝箱からは水色のカケラがド
ロップした。
これは神崎の胸元の石の中に吸収されていった。
そして、不穏な気配はその石から発せられていた
のだった。
『それは一体何じゃ?』
「これは異世界人にしかドロップを許されないア
イテム。星の雫のカケラ達だ。全部集めれば一
つの石となって、無限の力を得る事ができる」
まるで昔のおとぎ話のような、そんな伝説だった。
確かに王室をはじめ各国に伝わっている伝説があ
ったのだった。




