第三十一話 森の精霊
何もない壁に向かって話し出す弘前に、神崎は
怪訝な顔を向けた。
「そこで何をしているのかな?聞こえてないの
なら……」
そう言うと、壁に向かって攻撃したのだった。
すると、そこにはさっきのパーティーにいたは
ずのボロボロのマントを来た女性が下着姿で立
っていたのだった。
「人間……なのか?」
「いや……そもそも普通の人間が擬態なんてで
きないと思うけど?ドリアードかな?」
色っぽい身体付きに、鈴を転がしたような澄ん
だ声。
あまりの色気にクラッと来る。
だが、神崎の方はなんともない様子だった。
多分人間にしか効かない花粉なのだろう。
ここは自然が多いゆえに花粉が飛んでいてもな
んらおかしい事はないからだった。
『無理やり連れてこられたんです…助けて下さ
い』
これが普通の街で出会ったのなら、多分引っか
かっていただろう。
だが、ここはダンジョン内だ。
「さっきのパーティーはどうしたのかなぁ〜?」
『はぐれてしまって……だからここに戻れば…』
「もう演技は要らないよ。全員殺したのかな?
マントに血がついてるよ…そういうところは
魔物には気付けないかな?」
弘前に指摘されたマントを見て顔を歪ませたの
だった。
『お前たち……さぁこいつらを食らえ!』
声はそのままに、言葉が乱暴になる。
あまりに破廉恥な格好だったが、人によっては
効果的なのだろう。
そう、たまたま襲う人が悪かっただけなのだ。
「こいつ始末した方がいいか?」
「人形は倒しにくいかい?」
「いや……結局は魔物だろ?俺らに危害を加えよ
うとしている時点でアウトだろ?」
神崎は結構割り切りがいいらしい。
人間は殺せない。
そう言うと思っていたが、少し認識をあたらめる
必要があった。
『な…なにを……』
「黙っててよ?……トレントを操っていたのはお
前か?」
『我が森の一部……それを冒す人間どもに復讐し
て何が悪い?』
「でもさぁ〜、強いものがものを言う世界だから
さ。俺も力でねじ伏せる事にするよ」
魔力を高めると、一気に剣に魔力を流し、そのま
ま叩き切ったのだった。
切られた腕はただの枝になり、最後は枯れ木にな
ってしまった。
枯れ木の中央に魔石が埋まっていた。
「これも魔石だよな?」
「そうだね。さぁ、食べたらいくよ」
「やっぱり……そうなるんだよな〜」
いやいや取り出すと、水で洗うと目を瞑り口の中
に放り込んだのだった。
「ん……?」
神崎は今回も血生臭いものだとばかり思っていた。
が、そうではなかった。
口の中がミントのような爽やかな味が鼻を抜けて
、喉の奥へと通り過ぎていった。
「これ……美味しいかも…」
神崎の言葉に、弘前は何かを思いついたのか嬉し
そうに、微笑んできたのだった。




