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第二十六話 魔物の奪い合い

朝食を取ると、身軽なまま武器だけを持って出か

ける。

昨日ギルドで聞いておいたダンジョンの場所へと

向かったのだ。

身軽なのはアイテムボックスに荷物を入れている

からで、神崎は武器だけ装備した状態で向かう。


弘前はそもそも魔法師なので杖を持つのが普通だ

が、あまりに豪華な作りの杖なので身分を隠す為

か、ギリギリまでアイテムボックスの中にしまっ

ておくのだった。


ダンジョン内では何人かの冒険者が来ており、上

層では魔物に遭遇できなかった。


「効率が悪いな。先に奥に進もう」

「あぁ…ここの魔物はレベルが低いのか?」

「そんな事はないが……冒険者が多すぎるせいだ

 ろうね」


言われてみれば、そこかしこに冒険者を見かけた。

それもそのはず、3つのダンジョンのうち、一番

レベルが低く、無料開放しているダンジョンは、

ここだけだった。


残りの二つは入場料を取る為、冒険者といえど簡

単には挑む人はいなかった。


「でも、ダンジョンにお金取るなんてなぁ〜」

「それも商売だろう。自分の土地にダンジョンが

 出来て潤うんだから、お金を取ろうとするのが

 普通なんじゃないか?」

「あぁ、それもそうか……」


普通ダンジョンは国が運用する。

だが、ここでは個人が保有している。


貴族の土地に出来たダンジョンなら、入場も貴族

の管轄となる。

そこから出て来たドロップ品の持ち帰りにも税を

かけているという。


これでは、好き好んで入る冒険者はいなくなる。


階段を降りると二階層になっており、そこにもま

だ冒険者がうろついていた。


「もっと下に行こうか」

「これだけ混み合ってれば冒険者同士で取り合い

 にならないのかな?」

「なると思うよ?ほら、あそこ見て」


弘前の言った方を見ると、冒険者同士で争ってい

るところに鉢合わせたのだった。


『おい、俺らの獲物を取ってんじゃねーよ』

『俺らが仕留めたんだから、俺らのもんだろ?』

『そこまで瀕死にしたのは俺らだから、邪魔して

 んじゃねーよ?殺すぞ?』

『やれるもんならやってみろよ!』


どう考えても、先が読める。


思った通りお互い譲らず、しまいには獲物を抜き

放っていた。


「神崎くん、こっち」

「いいのか?あのままじゃ……」

「あぁ言う人たちは何を言っても無駄なんだよ。

 いっそ、お互い疲弊すればいいんだよ」

「でも…」


「あんな下っぱ同士の喧嘩なんかほかっておけば

 いいぞ」


いきなり後ろから声がして、驚いて振り向く。


「あなたたちは?」

「あぁ、俺たちはC級冒険者だ。もっと下に行こう

 と思ってね。君らもだろ?」

「あぁ、そのつもりだ」

「一緒に行ってやろうか?」

「結構だ」


いきなりの申し出に、弘前の方が即座に断ったのだ

った。


その理由はこのあとすぐに分かる事になるのだった。



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