第二十五話 同じ部屋で
イビル国には3つの未踏破のダンジョンが存在
する。
ここにはあまり冒険者はおらず、冒険者ギルド
はあるもののあまり機能していない。
その理由は、砂漠を好き好んで渡る人が少ない
というのが大きな理由だった。
昔は冒険者が護衛として付いて渡っていたのだ
が、今では陸路より海路を通る人が増えてしま
い、船で遠回りをしてでも安全に荷物を持って
渡りたいという人が増えたのだ。
その為砂漠が魔物達の無法地帯となった。
渋々国から騎士団が出て、魔物を間引くよう
になったのだが、それも最低限しかやらない為、
余計に、嫌悪されるようになったという次第だ
った。
あえて、弘前が陸路を選んだ理由はサンドワー
ムの素材が高く売れると言うのと、魔石を神崎
に一定量食べさせるという目的があったからだ。
まずは冒険者ギルドに寄ると、サンドワームの
素材を換金する事にした。
「素材買い取りはこちらでいいですか?」
「はーいっ!わぁ〜、砂漠を超えてきたんです
かぁ〜!今時珍しいですねー。全部買取りで
いいですか?」
「あ、はい」
神崎が答えると素材を中に運んでいく。
「代金は明日でいいですか?すぐに入り用でし
たら夕方まで待って貰いますが?」
「いえ、明日でいいです。それより、近場の安
い宿屋ってありますか?」
「それでしたら……」
ギルド職員は冒険者が良く泊まる宿屋を紹介し
てくれたのだった。
「お値段の割に、食事が美味しいんですよぉ〜」
「ありがとう、さっそく行ってみるよ」
大量のサンドワームの素材を持ち込んだせいか
笑顔で対応してくれた。
宿屋に着くと、一見ボロく見えたが店内は一階
が食堂になっており、二階からが宿泊用の部屋
が並んでいた。
「すいませーん、部屋いいですか?」
「あいよっ!今日は人が多いね〜、今空いてる
のは一部屋だけだがどうするかね?」
「一部屋ですか……」
「別にいいじゃん。それでいいです」
弘前が悩むのを横から答えたのは神崎だった。
別に男同士だし、困らないだろ?
と聞かれたが、そんな事はない。
とは、口が裂けても言えなかった。
「あぁ。それでいい」
「わかった、これが鍵だよ。二階に上がって
一番奥の部屋だよ」
女将さんの言葉にお礼を言うと、先に荷物を
置きに部屋に向かった。
しっかり掃除されており、綺麗だった。
ベッドも意外と大きく、男二人でも狭くはな
さそうだった。
「広いしいいじゃん。さぁ〜飯いこうぜ」
「そう……だな」
弘前だけが少し不服そうだった。
その理由を神崎は、まだ知らない。




