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第二十四話 砂漠の魔物

どうしてこうなったのだろう。

目の前にあるのはあきらかに魔力の気配はあるの

に、砂が渦を巻いて飲み込まれていたのだった。


「康介っ、これって何!?」

「あぁ、これは……」


さっきまで何もなかった場所がいきなり渦を巻い

て陥没したと思ったら、渦が急に下へと流れが出

来たのだった。


足を取られた瞬間、一気に引き摺り込まれる勢い

だった。


もがくと余計に抜け出せない。


「どうなって……ぺぺっ……砂が……」

「ちょっとおとなしくしてて…まったく神崎くん

 を食べようなんて……百年早いよ」


杖を出すと引き摺り込む渦の中央に向かった火球

を放ったのだった。


ドゴーンッと大きな爆音が響くといつのまにか渦

は止まっていた。


そしてそこには大きなミミズが現れたのだった。


「これがサンドワームだよ。土の中に生息してい

 て、通った旅人を引き摺り込んで丸呑みにする

 魔物だよ」

「さっきはよくもっ、俺がやるっ!」


引き摺り込まれそうになった時は焦ったようだっ

たが、実際出て来てしまえば問題ない。

そう思ったのだろう。


だが、次の瞬間魔法を放つ前に地面に潜ってしま

ったのだった。


「うそっ……」


神崎のどうしようという顔が振り返って弘前を見

てくる。


「土から追い出せばいいよ。見てて。」


弘前の手には小さな火球がいくつも出来ていた。

水の球を操っていた時に似ている。


いくつもの火球を作ると、どんどん分裂させて数

を増やしていく。

一個の威力が低いが、数があれば問題ない。


そして無数の数を操りながらゆっくりとそれを肥

大させていった。


燃えたぎるような灼熱の球体をゆっくり地面に降

らせていった。


まるでメテオのようだ。

燃え盛る球体は地面に落ちると爆発するように周

りに高音の火花を散らせた。


次々と落ちていく砂漠の地面の温度は、今では考

えられないくらいの高温になっていた。


いきなり飛び出すようにサンドワームが飛び出し

てくると、神崎は剣を握りしめると走り出した。


弘前は神崎に当たらないように加減しながら残り

の球体を地面へとぶつけた。


それはまだいるであろう仲間を追い出す為で、そ

れもすぐに成功したのだった。


あまりの高温に耐えきれず地上へと出て来たとこ

ろを一気に焼き払う。


あの時、獣人族を根絶やしにした魔法だった。

こうして、無事に砂漠を渡り切るとイビル国へ入

る事が出来たのだった。


砂漠を無事に乗り切るのは、かなり至難の技だっ

たが、弘前の機転のおかげで楽に通過できた。


サンドワームもいい経験値になった。


「うげっ…まっず……」

「せっかくの魔石だから、魔力の補充にいいし、

 結構色も濃いから補充には美味しいでしょ?」

「いや、美味しくないし……生臭し……魔石って

 洗ったらマシになるかな?」


あまりに神崎が飲み込みにくいというので、水で

洗い流す事になった。


が、やっぱり口に入れると生臭く吐きそうな味だ

ったらしい。



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