第十八話 友人との談笑
魂のない空っぽの神崎は、寝る事を必要としなか
った。
横になる様にいえば、横にはなるが決して目を閉
じない。
しかし、魂が入ってからは、睡眠もしっかり取る
ようになった。
食事も取るし、たまに考え事をするようにもなっ
た。
人間らしくなったと思う。
ただ食べれるだけでいいと思っていた食事が、神
崎のおかげで、和食に近いものも食べれるように
なった。
こうやって異世界へ来ると、本当に食事が恋しく
なるのだと実感したのだった。
「そういえば、醤油できたぞ」
「マジ?」
「あぁ、あとはトマトを買って他には一緒に煮込
む野菜もほしいな」
「それなら種を買えばなんとでもなるよ」
弘前にとっては、魔法を使えば植物の育成には困
らないと言った。
マヨネーズに醤油。
それらはこの世界には存在しないものだった。
だからこそ、異世界人である人間にしか生み出せ
ないのだった。
「明日はこれらを登録して、魔物の素材を換金し
てから……それから…」
「冒険者登録したいかな」
「それなら、ほら…」
弘前は手の甲を指差した。
「カードオープン」
一瞬、驚いたが目の前にひかるプレートが出てい
た。
「まるでゲームだな…」
「そうだね、でもこれは現実で、死ねば本当に死
んでしまう。」
「あぁ……そう…だな」
じっと眺めると、ため息を吐いた。
名前 神崎 奏(半神)レベル38
犯罪歴 なし
属性 全属性
魔法は回復以外は習得可能。
職業 冒険者E級
神崎にはステータスが高いのか低いのか疑問だっ
た。
「康介、レベルって普通はいくつが平気なんだ?
やっぱりレベルカンストって99?」
「あぁ、平民なら10がMAXで、騎士なら30が上
限だろう。魔法師となると、40くらいもあり
得るが……そこまで上げるのにはきっとヨボヨ
ボの老人になってるだろうね」
「そんな低いのか……」
「君は他人の経験値を貰っているから上限が高い
んだと思うよ?」
「なるほどな…」
「ドラゴンなどはレベル80とかザラだしね」
「…いるのか?ドラゴンが!」
少し嬉しそうな神崎に弘前は笑いを堪えた。
「見たいのか?ドラゴン」
「あぁ、だって想像上の生き物だろ?」
目を輝かせているのをみると、この世界に連れて
来てよかったと思う。
「今度一緒に退治しに行こう」
「えっ……見るだけじゃないのか?」
「ドラゴンはどんな部位も高値で買い取られるん
だよ。言い値で売れるぞ?」
一通り話すと、次第に眠くなって来ていた。
こんなに人と話したのは久しぶりだった。
少女の魂が宿っていた時は、話など聞く気もなく
すぐに寝かしつけると自室に帰った。
でも、今は楽しかった。
多分、それは神崎だからなのだろう。
やっと会えた親友なのだから……。