第十三話 魔力探知
マヨネーズを堪能すると、別の味も食べたくなっ
てくる。
やっぱり現代人の舌は超えているせいか塩だけ
で暮らしていくにはあまりに楽しみが無さすぎ
た。
もちろん、食べれればそれでいいと思ってはい
たが、実際に食べてしまうと、味とは恋しいも
のだった。
「日本人の心というべき醤油も欲しくなるな〜」
「作れないのか?」
「えっ……、醤油だよ?」
「だって、康介は魔法が使えるんだろ?発酵とか
一瞬で出来そうじゃん?」
「それは……できるけど」
「なら作れるだろ?小麦と塩と大豆だろ?」
聞き慣れた単語に、確かにそれなら集められそう
な材料だった。
植物の成長は魔法で実らせる事も出来る。
タネは市場に行けば手に入れる事ができた。
「ケチャップや、ソースは醤油ができれば作れそ
うだしいけると思うけど?」
神崎がいて本当によかったと思う。
性格は弘前が思い描いたままだったし。
知識はあらかじめ持っていたものだろう。
そもそも遺伝子は本人の毛髪から取っているので
本人そのものと言ってもおかしくはない。
ただ、細かい記憶があやふやになっている以外は
普通に話も出来るし、昔のままだった。
魔法の使い方は、馴染んだ身体のせいかそう時間
はかからなかった。
細かい制御は少しづつやっていけばいい。
食事を終えるとダンジョンの中に一緒に行く事に
したのだった。
「へぇ〜、ダンジョンの中って結構明るいんだな?」
神崎が一番最初に感じた事だった。
「神崎くんはダンジョンは始めてだよね」
「あぁ、そうだな……」
「ここは一番奥にあるボスを倒し、ダンジョンコアを
壊すと、休眠状態になるんだよ。もしくは消滅して
しまう事もあるんだ。でも、活性化することも出来
るんだ。ちょっと見てて」
アイテムボックスから取り出したのは、大量の血液だ
った。
それをダンジョンの入り口に流し込む。
今まで殺してきた人間や亜人、魔物などを合わせた血
だった。
勿論魔族のも入っている。
魔力を多く含むもの達の血は休眠中のダンジョンを活
性化させるのに実に最適だった。
弘前は光と水の魔法適性がある。
その他は使えはするが得意ではないという程度だ。
「ここからが僕の腕の見せ所かな〜」
水の魔法で一気に魔力を循環するように血を増幅
させてダンジョン内部へと巡らせたのだった。
入り口に溜まっていた血がまるで生きているかの
ように流れ出した。
血液が流れていくという事はこういう事を言うの
だろう。
通路をものすごいスピードで通っていく。
「これって……見てると凄いな……」
「もうそろそろだよ……」
弘前が言った通り、まるで何か生き物の中に入っ
たような感覚だった。
壁がうねりドクンッドクンッと息づき始めた。
「おいっ…これって……」
「上手くいったようだね。これが本来のダンジョ
ンだよ。さぁ、行こうか」
活性化したダンジョンはまるでダンジョンそのも
のがまるで生きている生物のような気さえする。
弘前に言われるがままに、奥へと進んだ。
すると前から何か嫌な殺気がする。
「待って……何か、いる?」
「あぁ、魔力探知をかける前に気づいたみたいだ
ね!普通はここで魔力を外部に広げるんだよ。
見てて。こういう風にね」
弘前がゆっくり息を吐くと、次の瞬間周りに薄い
魔力が放たれたのだった。
「これが魔力探知?」
「あぁ、ただし、あまりに魔力を多く乗せると、
敵に気づかれてしまうから、出来る限り少なく
薄く伸ばす感じで……やってみる?そうしたら
どこに何匹いるかがわかるんだよ」
「やっていいか?」
「うん、勿論。」
さっきの弘前のを真似るようにゆっくりと、そし
て薄く膜を伸ばすイメージで辺り一面に広げてい
く。
すると、さっきまで嫌な空気の正体が形をなして
理解した。
前に少し行ったところを曲がると2対の魔物がう
ろついていたからだった。