第二十話 新たな奴隷
最近はエリーゼさんも忙しいせいか、冒険者ギル
ドに来るのはナルサスと二人になって居た。
「えーっと、どの依頼にしようかな〜」
「奏、ちょっと考えている事があるのだが、いい
か?」
「うん、別にいいけど…」
最近お金にも余裕が出てきたので、ナルサスの防
具も新調したばかりだった。
ほつれてきた服や、靴も新しくしたし、問題はな
いように思えた。
「何かあった?」
「最近、奏が作った非常食のおかげで結構お金も
貯まってきていると思う、だから…奴隷をもう
一人考えないだろうか?」
「俺はナルサスにそばにいて欲しいんだけど…」
「……!」
「……!」
一瞬お互いの言葉が重なったせいで、聞き取れな
かった。
「奴隷?」
「あぁ……俺は奏から離れる気はないが?」
「そっか……てっきり、奴隷を買った分を稼いだ
からって言うのかと思って…」
「それは無い。俺は一生奏だけの奴隷だ。それで
いいとさえ思っているんだ」
これほど、信頼されているとは思わなかった。
何度も人を信用するなと言ってきたナルサスから
こんな言葉が聞けるとは思いもしなかったからだ。
「うん、そうだね。いつもナルサスには苦労させ
てるしね…もう一人戦える人を増やしたいんだ
よね?」
「あぁ、それもあるが……ずっと奏について居ら
れる護衛がほしいんだ。俺がついているのが一
番いいんだが……」
「いいよ、わかった。今から見に行く?」
「あぁ、そうしよう」
最初にナルサスを買った奴隷商人を訪れると、少
し驚いて居た。
あれほど貧弱だったナルサスが立派な鎧をきて、
背中には剣を携えているからだった。
そもそもナルサスは愛玩奴隷として買い手がつく
事が多く、戦闘奴隷として買う客がいなかった。
勿論、敗戦国の戦争奴隷なので戦えないわけでは
無い。
ただ、見た目がいいと言う理由で買っていく貴婦
人が多かったのだ。
それも、すぐに飽きて戻ってくる事が多かったの
だが……。
「これはまた立派になって…今日はどう言った要
件ですか?」
「えーっと、戦える奴隷が欲しいんです」
「戦えるですか?」
「はい、いつもナルサスには無理させちゃってる
ので、少しでも負担を一緒に担えるような……」
「う〜ん、最近はちょっと毛色が違うのが多くて
ですね〜………」
そう言って案内された場所には、この前の戦で捕
まった獣人族の女、子供が囚われていた。
「この子達は……」
「さきの戦で親を亡くした子供達ですな…、いく
ところがなく盗みを働いたりして捕まったと聞
いています」
「戦………」
神崎はじっと眺めると考えてしまう。
獣人族は貴重品を持たせるとそのまま逃げる癖が
あるという。
奴隷紋があるので逃げ切れはしないのに、命を賭
してでも仲間に盗んだものを託す習性があるとい
う。
それほどまでに、自分の命が軽いのだった。