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第十三話 恵まれた生活

ギリギリと首にロープが締まり、手足をバタつか

せるが、鎖で繋がれているせいで、身動きが取れ

ず、散々もがくといきなり痙攣しダラッと力が抜

けたのだった。


着ていた薄着の布から足元にポタポタッと滴り落

ちるものがあった。


尿を垂れ流すように排泄物が出てくる。


見ていた観客は顔を顰めたが、身内を殺された

家族にとっては、仇な存在でいつまでも睨みつけ

るように見ていた人が多くいた。


夏美の死体はそのまま防腐布に包まれ、王都へと

運送される事に決まっていた。


領主の手紙を持つと、団長自ら王都に赴く事にな

った。


「カイアス、手紙と荷物はお前に任せだぞ」

「はい、しっかり伝えておきます。エリーゼ、お

 前はサボらず兵の訓練を頼んだぞ?」

「分かってますって、早く行ってください団長〜」

「こいつ〜、そんな生意気な事を言うと、俺の代

 わりに王都行きにさせるぞ?」


一瞬嫌な顔をする。


「私がサボった時などありましたか?」

「俺が知らないとでも思ったのか?カナデくんの

 事は大層気に入っているとか?一緒によく出か

 けていると聞いているぞ?」

「それは……」


確かに、まだ幼い少年と聞いていたが、実際見て

見ると可愛らしい容姿の子だった。


ほかってはおけないというのもわからないではな

い。

が、エリーゼがここまで子供好きだったとは思わ

なかった。


男っ気もない女性だったし、誰かと恋バナをして

いる様子もない。


はっきり言って女として見たことがないくらいだ

ったからだ。


「まぁ、子供に手を出すなよ?流石に庇いきれん

 からな」

「団長!なんて事を言うんですか!」


焦るエリーゼに周りの兵士も苦笑いを浮かべてい

た。

それほどまでに、カナデという少年を気に入って

いると言う事を、みんな知っていると言う事だっ

た。


今、その少年のそばには奴隷商で買った若者が付

いている。


領地にいる時に、一度手合わせをしたが、なかな

かに剣筋のいい青年だった。


「エリーゼ、あの少年についている奴隷なんだが」

「お察しの通りです」

「なるほど……、だからか…気をつけて見ておけ」

「勿論です」


胸を張っていうエリーゼにカイアスは手を挙げる

と荷物の確認と王都の女騎士、精神的に病んでし

まっている河北朱美を乗せると、別の荷台に死体

を運び入れた。


勿論、魔法で防腐処理はしてある。

道中で腐ってしまってはいけないからだ。


こうして、神崎が戻って来る前に一連の騒動の当

事者を始末しすぐに出発したのだった。


夕刻には出発したので、神崎が帰ってきた時には

死体の処理や、物見台の解体も終わった後だった。


村の女達はしばらくこちらに滞在するらしいが、

その後は別の村へと移住されるようだった。


早く、嫌な記憶を忘れて新しい人生を送って欲し

いという領主の願いだった。


この世界では人の死は案外身近にあるものだった。


森で暮らせば魔物に襲われ、街で暮らせば貴族か

らの弾圧に苦しめられる。


旅行とて馬車しかなく。歩いていけば危険度は高

まる。


それに、村から村までも何日もかかかる。

それほど不便な世界なのだ。

だが、それに誰も不満を言わない。


それが当たり前なのだから……。

今、神崎が領主様の屋敷でとてもいい暮らしをし

ている。


もしこれが一介の冒険者だったら、今日の稼ぎに

よって食事や、宿屋にさえも泊まれず野宿という

事もある世界なのだった。

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