第九話 卵ゲット
全く危険が伴わない訳ではない。
コカトリスとて魔物なのだ。
見つかれば、逃げるのは相当難しいとされていた。
空を自由に飛べるのもあって、グリフォンほど厄
介ではないと言っていたが、それでも並の冒険者
では太刀打ちできないという。
尻尾の蛇と目が合うと石化が始まる。
状態異常を治すポーションでは効かないので、石
化専用のポーションが必須となるらしい。
「そんなものもあるんですか?」
「あぁ、もちろんだ。奏にはまだ見た事もない魔
物がいっぱいいるから、ゆっくり覚えていけば
いい」
やっぱりナルサスは優しいと思う。
彼を選んで正解だったとつくづく思った。
「ナルサスでよかった……」
「奏、どうした?」
「いや、奴隷を選ぶって言った時に、本当は選び
たくなかったんだ。だって、自分が戦えないか
らって、前に出て危険な魔物と代わりに戦って
貰うって……なんだか卑怯かなって……」
「そんな事はない。イタズラに暴力を振るう主人
が多いんだ。そんな中で、普通に生活をさせて
もらえているだけでも俺は奏に感謝している」
「……」
神崎は決してナルサスを見下した事はない。
自分がそうされた時に、辛かったからだ。
だから自分がやられて嫌な事は他人にはしない。
そう決めていた。
「二人で冒険に出るのはもっと先になっちゃっ
たね?」
「俺は、どこでも奏がいるなら構わないが…そ
れでも、冒険に出るのはもう少し知識も、体
力も付けてからにした方がいいと思うぞ?」
「あ………なるほど……善処するよ」
朝のランニング以外にも、少し兵士達の訓練に
混ざるか?と真剣に考えたのだった。
採取依頼を済ますと、山岳地帯へと足を踏み入
れたのだった。
コカトリスの卵は表面が柔らかく強い衝撃を与
えるとすぐに割れてしまう。
そして問題なのは、割れた卵液を浴びると、魔
物が一斉に集まってくるという危険性を孕んで
いる事だった。
だから慎重に運ぶ必要があった。
のだが、神崎にはそれは不要だった。
それもそのはず、アイテムボックスの中は振動
すら届かないからだった。
いくら走っても、ポッドのお湯すらこぼれなか
った。
「便利ですね?」
「うん、そうだね」
「せっかくなら、全部頂いちゃいましょう」
「全部?」
「そうです。コカトリスは蛇が本体なんです
ですから……ほらっ……」
やっと険しい道を登りきると、そこには大き
な鳥の巣が作られていた。
その中央にまあるい半透明の球体がいくつも
転がっていた。
手で触れると、まだ暖かかった。
産み落とされて数時間という所らしい。
鮮度のいい卵だった。
それも結構な数があった。
大きさは20センチくらいあったが、数が多い。
「こんなに産むんですか?」
「あぁ、その中でも孵化できる卵は少ないか
らな」
どうして?とは聞かなかった。
聞かなくても理解したからだった。
こうして人間が持っていったり、コカトリス
自身が踏みつけたのだろう。
巣の中にはいくつか潰れた卵が散乱していた
からだった。