第二話 犯罪者の末路
部屋に戻ると、早速エリーゼから遠征の話を始め
たのだった。
「こういうわけで、さっきの女を確保したわけな
んだ」
「そうなんですね……彼女もあの時飛ばされてき
た俺と同じクラスメイトです。前に会った長野
達と仲がよかったんです。向こうでは……」
「今は一人らしいが、同じ異世界人を廃人のよう
にして魔物の子供を孕ませていたんだ」
「……やってもおかしくないです。彼女なら…」
「そうなのか?仲は良くないのか?」
エリーゼが聞きたいのは、クラスというものがど
れほどのつながりなのかを知りたいらしかった。
「全然です。他人なのだから信用も何もないです。
一人が苦しい思いをしていても、見てみぬふり
をするような連中ですよ」
神崎は昔を思い出しながらいう。
それを聞いたエリーゼは、覚悟を決めたらしい。
「それなら……処刑しても構わないな?」
「……」
「この国では、犯罪者は奴隷に落とすか、その場
で打ち首と決まっている。」
そう言い張ると、戻っていった。
今の神崎には止める気にもなれず、事の成り行き
を見守る事しかできなかった。
ただ、一言。
聞いてみたい事もあった。
もう一人の転生者は河北朱美だった。
女子の中ではおとなしい方だったが、夏美とは話
をする程度には仲がよかったように思えた。
離れの屋敷に、村の女達と、連れてこられた騎士。
そして河北も収容されていた。
「すいませーん、ちょっといいですか?」
「はい、あぁ、君か。いいよ、入って」
エリーゼさんから話は通っているらしい。
「奥の部屋にいるよ。ただ……話はできないと思う
けどね」
メンタル面のケアも兼ねて医者が待機されていた。
コンコンッ
ノックをしても返事はない。
「失礼します…」
中は質素な作りで、中央に置かれたベッドに座っ
ていた。
何も考えず、ただぼうっとしている。
ときたま大きくなったお腹をさすると愛おしい
ような顔で微笑んだのだった。
「河北さん………」
「………ランスロットさん……早く貴方の子供を
産みたいわ……ねぇ〜、早く人間に戻って一緒
ここから逃げましょう……海の見える家がいい
わね〜」
気が狂れているのか、もう現実が見えていないよ
うだった。
「俺の事…覚えてないよな?神崎奏……聞き覚え
もないのかよっ……」
「………神崎……くん?」
「…!!」
何かを思い出したのか、すぐに名前を繰り返した。
「神崎くん…神崎くんは……殺されたわ……だって
長野くんが……そうよ、いきなりこの世界に来た
時よ!そう、そうだわ……真っ赤になって、連れ
て行かれたのよ。可哀想に……今の私みたい」
「……ッ」
全く通じなかった。
あとは、正気であろう、夏美だった。
地下牢に繋がれていると聞いていた。
エリーゼからの忠告では、一人では会いに行くなと
言っていた。
もちろん、男を魔物に変える力の事も聞かされてい
たのだった。