第三十話 決戦の終結
泥沼の戦いとはこう言うことを言うのだろうか?
ぬかるみに何度か足を取られ、兵士達は苦戦を
余儀なくされたのだった。
「くそっ……うわぁっ!」
身体の小さいゴブリンの方が小回りもきき、す
ばしっこいのだった。
「立てっ!いつまで座ってる気だ!死にたいの
か!!」
エリーゼの罵倒が飛ぶと、即座に立ち上がると
向かって行く。
厳しい訓練をしては来たが、こんな足場の悪い
ところで戦うハメになるとは……。
今まで想定していなかった。
これからはそれも考えて、訓練すべきだと考え
なおしたのだった。
「ちょっと、押されてんじゃないわよ!あんた
達、しっかり死ぬ気で戦いなさいっ!」
夏美の声を聞くとゴブリンやオークまでもが勢
いを増したのだった。
朱美のそばにいたランスロットも今は森を駆け
回っている。
もう自我すらない。
ただ、夏美の言葉通りに動くだけの人形でしか
なかった。
そんな、人形を壊すには容易だった。
自我のない攻撃は簡単にかわせる。
エリーゼは次々と切り捨てて行った。
あまりの速さに、ゴブリン達がついていけなか
った。
「もう、終わりか?」
「何言ってんのよっ……まだっ……えっ!」
後ろを振り返ると、まだいたはずのゴブリン兵
は一掃されていたのだった。
「伏兵……」
「そう言うわけだ。降参するか?」
「冗談っ……私がどんな思いでこいつらを作った
と思ってんのよっ、簡単に殺してんじゃないわ
よ!」
持っていたナイフを突き出すが、すぐに避けられ
ると、地面に転げ落ちた。
「逃げんじゃないわよ!」
「逃げる?そんなへっぴりごしの攻撃を逃げる訳
がないだろう。」
エリーゼが言うと、夏美の持っていたナイフを蹴
り上げたのだった。
拾おうと後ろを向けた瞬間、剣の柄で殴ると気絶
させたのだった。
事後処理は簡単だった。
司令塔を失った群れなど容易く御す事ができた。
オークキングといえど、今のエリーゼには敵では
なかった。
一匹のゴブリンが逃げようとしたので捕まえると
巣穴まで案内させた。
そこは森の奥。
深い場所にあった。
ぽっかり空いた穴の中。
そこには腹ボテの女性が何人も縄で縛られていた。
中には大事そうに旦那だったカードを握りしめて
いる女性もいた。
ほとんどの女性が放心状態だったが、まだ意思を
保っている女性もいたのだった。
王都の騎士だと名乗った彼女は、事の顛末を語っ
てくれたのだった。