第十九話 外の景色
怯える朱美に少し大きめのゴブリンが覆い被さっ
てきた。
「いやぁ、やめてっ!加藤さん、助けてっ…」
「ランスロット、彼女嫌だって〜、さっきまで仲良
くしていたのにね〜。悲しいわね〜」
夏美の言葉に、朱美は目を見開いたのだった。
目の前にいる魔物がランスロット……さん?
「うそ……でしょ…ランスロット…さん?」
「ア……アケ………ミ…」
「……どうして……どうしてなの……」
言葉はカタコトだったが、もともと人間だった
場合は話せるらしかった。
「私のスキルなの。情を交わした相手をゴブリ
ンにして使役できるってね…」
「戻して……戻してよっ……」
必死に訴えてきたが、一度変わったものを戻す
事などできないし、やる気もなかった。
「いいわよ。でも……朱美、貴方が自らランス
ロットの子供を産むこと。そうねぇ〜20匹。
それだけ産めば元に戻してあげるわ」
「20匹って……私そんな事………」
「出来ない?だったら、彼は魔物のままね。も
し騎士に見つかったら殺されてしまうかもし
れないわね〜」
悩む仕草をしてはいたが、握りしめる手が震え
ていた。
どんな答えを出そうと、結果は同じだ。
「……わかったわ。やるわ」
「話がわかるじゃな〜い?そうそう、もちろん
ランスロット以外の子の面倒もみるのよ?」
そう言うと、さっきまでお預けをくらっていた
ランスロットが再び朱美に覆い被さってきた。
ドロドロになった穴を指で確かめ、自らのモノ
を押し込んでいく。
「ランスロットさん……私のせいで……ごめん
なさい……」
朱美は抱きしめるようにゴブリンに抱きつきな
がら涙を流したのだった。
女騎士と朱美を抱えながらダンジョンの外に出
て来た。
そこは城の裏手と繋がっていた。
入る時は城の地下からで、出る時もそこに繋がっ
ているものとばかり思っていたが、違っているら
しかった。
魔物を隠すなら森の中。
できれば大きく広がっている方が隠れやすい。
「あんた騎士なんでしょ?どこかいい住処知らな
いの?」
「お前なんかに教える訳がないだろう…こんな恥
ずかしめを受けるなど……」
「ふ〜ん、でもさ〜、あんたの同僚は喜んでゴブ
リン生活しちゃってるわよぉ〜?」
そう言うと、さっきから休憩のたびに朱美をもて
遊ぶような仕草をしているのがいた。
ゴブリンになりたてのせいか、朱美を抱きしめる
と大事そうに抱えている。
「ランスロット……」
「まだ意識があるって信じてるの?もう人間には
戻れないのにね〜、健気よね〜」
「お前という奴は……ひゃぅっ、あぁっ…」
怒りを露わにするが、その度に後ろから突かれ悲
鳴を上げたのだった。