第十八話 薄情なのはどっちだ
ガタガタと震える騎士に、夏美は笑いが止まらな
かった。
こんな殺伐とした世界に連れてこられて、力を授
けられて、勝手に戦う事になって。
処女は薄汚い魔物に奪われて。
初めての彼氏には見捨てられた。
今はきっと他の女にうつつを抜かしているのだろ
う。
そう思うと、居ても立っても居られなかった。
「みんな魔物になって仕舞えばいいのよ…そうで
しょ?死にたくないんでしょ?」
「死にたくない……見逃してくれ…るのか?」
なんとも気の弱い男。
こんなのでも一応兵士としては役に立つのだろう
か?
「ランスロット、こっちに来てくれる?彼を抑え
ておいてくれる?」
「…」
こくりと頷くとさっきよりもがっしりした体格に
なっていた。
怯えるかつての同僚を押さえつけると、夏美の前
に差し出してきた。
さっきまでいたオークキングはさっき気絶した女
騎士に種付けしていた。
「タネ付けは終わった?だったらここにも入れてみ
なさーい。奥までしっかり入れるのよぉ〜」
夏美の言葉にガタガタ震えていた騎士の顔色がみる
みるうちに真っ青になって行く。
「助けてくれ……やめろっ……俺も魔物にしてくれ
死にたくないんだっ……」
ランスロットは夏美と交わってゴブリンより少し身
体が大きくなって、筋肉もしっかりついた。
自分も同じ事をするとばかり思っていただけに、予
想外の言葉に動揺を隠せなかった。
夏美が丁寧に服を脱がせてズボンを下ろした。
パンツ一枚になった男の足を軽々と持ち上げると、
股間に当てた。
「やめっ…やめてくれっ…いやだっ、やぁっぁあ」
泣き叫ぶ声が煩かった。
何も解さず、思いっきり奥に突き入れたせいで血が
飛び散っていた。
服はそのまま夏美が身につけると、ゴブリン達が火
を起こしていた。
「わかってるじゃな〜い。」
事切れた男をくくりつけると生きたまま火に炙って
行く。
皮膚が焼ける匂いがして、動物とはまた別の臭いが
充満したのだった。
その一部始終を眺めていた仲間の女騎士は諦めたか
のように抵抗をやめた。
仲間のうち、一人は魔物に、一人は焼かれ、そして
もう一人は自分と同じようにゴブリン達の苗床にな
ったのだった。
生きていた時には肉として切り分ける事もできたが
死亡が確認できるといきなり地面にコロンとカード
が落ちたのだった。
「何よこれ……、ふ〜ん。現地の人間ってこんな風
になるのね〜」
残った肉をよく焼くと手に持ったままさっきの女騎
士の元へと行く。
「お肉、食べる?」
「……」
女騎士は目の前に差し出された肉を見て、震えなが
ら口を開けた。
生きる為に、食べる。
まだ朱美が生きている。
彼女だけでも助ける方法を探らねば。
そう考えているのだろう。
おとなしく言う通りになってはいるが、目は死んで
はいなかった。
それは夏美が一番よく知っている感情だった。
「仲間の肉って美味しい?」
「……な…なかま?」
「そうよ、見てなかったのぉ〜?さっきの連れの男
の人のおちんちんだよ?さっきのはぁ〜」
声を張り上げていうと、涙を浮かべながらも噛み締
めていた。
吐かないだけでも、気丈なことが伺える。
「そう、じっくり味わうといいわ。さぁ〜て、朱美
ったらどう言う反応するかしらね〜」
向こうの壁際で気絶するように眠っている朱美の方
へと向かった。
さっきまでランスロットと呼ばれていた騎士を連れ
て行く。
面影が少し残っているに過ぎないが、果たして分か
るのだろうか?
「朱美〜あっけみちゃ〜ん!おっきて〜」
何度も呼び起こすと、微かにうめき声が漏れた。
「んっ……」
「あ、起きたぁ?」
「……ここは……はっ、ランスロットさんはっ!」
バッと起き上がるのをじっくり眺める。
「加藤さん?どうして…こんな事を?」
「えぇ〜〜〜、それ聞いちゃうの?私を一人残し
て探しにも来ない薄情なクラスメイトなのに?」
「それは……知らなかったの!だって、死んだっ
って……長野くんが……」
何も知らないと言う朱美にランスロットをけしか
けたのだった。