第十三話 期待通りの活躍
予想外の展開に、見にきていた観衆はエリーゼの
活躍に歓声をあげ、ナルサスの予想外の戦闘力と
行動に声援を送っていた。
そして、幼いながらも戦況を左右した神崎にも、
アンネからの興奮気味の感想を聞かされる事にな
るのだった。
「では、決闘の内容通り今日から、傭兵団員の
街の中の生活、拠点の解散、そして、長野、
上島両名の即時退去、そして二度と戻らない
ように固く禁じるものとする。そして、この
事は国に報告するものとする、この事をここ
に宣言します。では、これで解散とします」
ギルドの采配で、今日のうちに戦いに参戦した
傭兵団員とその身内へと通達が行ったのだった。
副団長が参加し、統括であるルーカスが参戦し
てなお負けたという汚名を着たままこの地を去
る事になったのだった。
「まさかこんな事になるとはな……とんだ依頼
を受けたもんだぜ」
「そうですね。まさか、ここまでとは……一度
は手合わせしてみたかったのですが…それよ
りもあの少年。実に魅力的でしたね……」
ルーカスはじっと見つめる。
その視線の先にいるのは神崎だった。
ルーカスの魔法は異次元にワープホールを開け
てそこから攻撃をすると言うもので、見えてい
る範囲であればどこにでも出現させれるという
ものだった。
これはオリジナルで、とある媒体があってこそ
出来る事だった。
だが、あの少年が手に持ったナイフで攻撃して
きた時に、たまたまか、それともわざとなのか。
鎧には傷つけられていなかったのに、媒体にな
るモノにはしっかり攻撃が届いていたのだった。
終わった頃には、パキッと割れて、使い物にな
らなくなっていた。
「これでは、私の今後の魔法運用に支障をきた
しそうですね…」
「まじか?」
「えぇ、しばらくは王都の団長のところでお世
話になりますかね」
「そうだな……ここの支店も活気があってよか
ったんだがな〜。まぁ、いいさ。場所にはこ
だわらねーし?」
闘技場は取り壊され、空き地になると商人達の
仮テントを建てての販売広場として賑わう事と
なった。
「カナデ、実にいいタイミングだったよ」
「うん、あいつならきっと俺を盾に使うって思
ってたからね」
「奏、あまり無茶をしないでくれ。もし何かあ
ったらと思うと気が気ではないんだ!」
「それもそうだが……あのままでいいのか?あ
の二人には止めを刺すか?」
エリーゼらしからぬ言葉だった。
「無抵抗の相手を殺すのは非難される行為なん
でしょ?」
「そうだが……二度もカナデを狙ってきたんだ。
私はそれだけでも許せない」
エリーゼが神崎の為に怒ってくれると言う事が
嬉しかった。
もちろんナルサスもだ。
「大丈夫。ナルサスもそばにいてくれるし。俺
は大丈夫だよ」
「そうか……ならいい。もうすぐ私は遠征につ
いて行くから、ナルサス、しっかりカナデの
護衛をするんだぞ?」
「分かってます。奏にはもう二度と誰も近ずか
せませんよ!」
気合いの入ったナルサスを眺めて、少し照れ臭
くなる。
こんなイケメンに護られるって、すっごく貴重
な事ではないだろうか?
これが女子だったらと思うと、きっと恋に発展
していただろうと考えてしまう。
あぁ、俺で悪かったな!
俺だって可愛い女の子と恋愛してみたいよ!
そう、心の中で呟きながら屋敷へと帰ったのだ
った。