第十二話 決着
動かなくなった神崎を目の前にして、ナルサスは
怒りで我を忘れるくらい咆哮を上げると、一気に
攻撃を開始した。
バフが弱まっていない事から、まだ意識があるの
は分かっている。
が、いつ何が起こるか分からない。
そう思うと、すぐにでも決着をつける必要がある
と判断したようだ。
その頃、エリーゼは上島の魔法が水属性なのを、
喜ばざるを得なかった。
なぜなら、エリーゼが炎の属性なので、圧倒的に
正反対なのだ。
あとは火力と運用状況によるが、それは見ていれ
ばどちらが有利かは自ずと見えて来る。
それがすなわち、戦況を決めると言える。
剣技だけならもちろん、エリーゼが上だ。
余裕を持って魔法を避けて、剣をかわす。
たまに何もない場所から来る攻撃を避けながら
魔力切れで自滅するのを待つ。
そして、やっと上島の魔力が切れた瞬間、思い
っきり柄で腹を抉るように叩き込んだ。
「このぉ……女のくせに…」
「女だからなんだ?まともに訓練もしないやつ
に勝てるわけがないだろう?」
上島が意識を失うと壁際に放り投げた。
次にさっきまで邪魔してきたフードの男へと
向かう。
ナルサスは今もバトルアックスを持った大男と
対峙していた。
こっちは、一進一退を繰り広げてはいるが、バ
フの回復効果のあるナルサスのが一歩有利に見
える。
だが、油断は禁物だ。
またに邪魔するようにどこからともなく攻撃を
繰り出してくるフードの男がどうにも厄介だっ
た。
一対一なら、そこまでは苦労しないだろう。
エリーゼなら…だが。
「さっきは邪魔ばかりしてくれたようだが、サシ
での勝負と行こうか?」
「それは困りましたね。こちらとしては貴方とタ
イマンは避けたいんですよ?」
そう言うと、急に腕が空間の中に消える。
そして、出てきた時には神崎をその手に掴んでい
たのだった。
「これで手出しは出来ないでしょう?あなた達の
弱点はこの少年のようなのでね……使わせて貰
いますよ…ふふふ。やっぱり……」
「そう来ると思ったよっと!」
神崎が男の腕を捕まえるとそのままアイテムボッ
クスから短剣を取り出し切りつけたのだった。
もちろん刺すなんて事はしない。
ナルサスに何度も言われた通りに、横に切るよう
に何度も切りつける。
手を離して距離を取ろうとしたところを、エリー
ゼが素早くつかみかかる。
咄嗟に空間を歪める事はできなかったらしい。
フードの下には皮の鎧を着ていたらしく、あまり
ダメージにはなっていなかった。
が、意表をついたと言えば、成功と言えた。
丁度、決着が着いた頃、ナルサスの方も大男から
一本取っているところだった。
腕力では劣ると思われていたナルサスだったが、
予想外に相手の武器をとると振り回したのが、周
りからは意外で、喝采を受けていた。