第十七話 交渉決裂
約束の3日が経った。
宿屋に泊まっていた長野と上島は腰を上げると
ギルドへと向かった。
最近新しいダンジョンが見つかったという報告
が出たと言うので詳しい話を聞くと、選抜隊が
安全調査と共にクリアしたと言う。
そこでドロップする飛魚の鱗や羽根は高値で売
買されるという。
「俺らも後でいくか?」
「いや、もうクリアしたんだろ?だったら、遅い
だろ」
「あ、そっか。」
「それをクリアしたのが、女騎士のパーティーら
しいぞ」
長野の言葉に上島が喜ぶ。
一石二鳥。
彼女達と組んで、お宝も女も自分のものにすれ
ばいい。
そう安易な考えが浮かんでいたからだった。
早く来たはずだったが。
すでに待っていたのを見ると、どれだけ早く来
ていたのだろう。
だが、待っていたと言う事は話をする気がある
と言う事だった。
そして、たった一人で待っていたのだった。
「えーっと、エリーゼさんでよかったかな?」
「あぁ、そうだが。話があると聞いたが?」
騎士なせいかぶっきらぼうな話し方だった。
「それなんだけどさ〜、連れの銀髪の子は?」
「竜、おとなしくしてろっ、悪かったな。俺たち
は強い。だからあんたと組めばもっと強くなれ
る。」
「ほう〜、自身満々だな?」
エリーゼの態度に、上島が話し出した。
「俺らって、チート能力があるんだよ。だから、
戦闘時は任せてもらっていいぜ?仲間に優男
がいただろう?あんなの追い出して、俺らと
組もうぜ?女二人じゃ何かと困るだろう?」
下心が見え見えだった。
「悪いが、誰かと組む気はない。」
「へ〜、強気じゃん?俺らの実力も知らねーの
にか?」
挑発的に言うと、エリーゼは剣を床に立てた。
「騎士たるもの、信用できぬものに命を預ける
事はできない!其方たちのような下賤の者と
組む気はない!」
「おいおい、女だからって調子に乗るなよ?」
「おい、待て!」
上島を止めると、目の前を炎が上がった。
「これでも、まだ組みたくないか?」
脅すつもりで長野が放った炎だった。
だが、エリーゼも火属性なのだ。
剣を抜きさると今まさに、目の前に炎を切り裂き
剣にまとわせたのだった。
「そういえば忘れていたよ。私も火属性なんだよ」
「なっ……」
ギルド内だと言うのを忘れたかのように、何個も
の火炎がエリーゼへと向かっていった。
上の階でこっそり眺めていた神崎はすかさずバフ
をかける。
目にも止まらぬ勢いで放たれた炎は全部出口の方
へと弾き返されたのだった。
「おい、竜もやれっ!」
「おうっ……」
水属性なら勝ち目がある。
そう思った瞬間、あの顔のいい優男が2階の階段
から飛び降りてきたのだった。
「助太刀しますよ?」
「要らん。こんな奴らにカナデがっ……本当に腹
立たしい。このまま殺してやりたいくらいだっ!」
エリーゼはいつになく怒っていた。
馬車で聞いた事が正しければ、神崎は元の世界で
孤独だったと言う。
誰も信じられず、ただ苦しみの日々だったのだ。
「俺も一緒なんですからね?」
「あぁ、わかっている。しっかり懲らしめておか
ないとな」
そういうと、一気に距離を詰めると剣で斬るので
はなく、腹を蹴り飛ばしたのだった。
予想以上に力が溢れてくる。
神崎のバフのおかげだろう。
心配するあまり、強化バフをかけたらしかった。