第十四話 強化訓練の成果
食事の場には、もうみんなが集まっていた。
みんなというのは領主様を始め、アンネとその母
親、そして護衛のエリーゼと騎士団の副団長代理
だった。
顔も身体も大きく、睨まれると怖く感じる人だっ
た。
実は小心者だという事をエリーゼから聞くまでは、
見るだけでビビっていた。
朝の報告と、訓練内容の復唱とエリーゼが今日は
神崎について冒険者ギルドに行くことなどが報告
に上がっていた。
「他に、なにか変わった事はあったか?」
「そういえば、今日異世界からの転移者と話の場
を設ける事になりました」
「あぁ、今回は多いと聞いたが、この領内にもい
るのか?王都から出ないと聞いていたが?」
「それが二人だけで、冒険者登録をしていたよう
です」
「気をつけていきなさい。それと、来月から死の
森へと調査団を派遣する事になった」
領主の言葉に、騎士の二人が息を呑む。
「どうして今なのですか!」
「分からん。だが、いつかはやらねばならないだ
ろう。それと、近隣の村へいつも行く商人から
意外な話が出ていてな…」
どうにも雰囲気が悪い。
「カナデ、死の森とはカナデと会った森の事です。
あそこには危険な魔物が多く生息していて危険
なのです。そこにうちの兵士達が行くことが決
まったと言っているのですよ」
アンネが意味がわからなそうにしている神崎に
耳打ちしてくれたのだった。
このルイーズ領は危険な森に面している場所と
あって、たまに魔物の襲撃を受ける事もある。
そして、領主のハーゼン・ルイーズは歴戦の武人
と言われるほどに、戦力的にも、戦闘力的にも優
れているとされていた。
だからこそ、危険な死の森の調査へ行く事を命じ
られたのだろう。
「カナデくん。今回の遠征にあたって、君のポー
ションを持っていきたいのだが、作れるか?も
ちろん、高く買い取るぞ?」
「あっ…はい!俺のでいいのなら、頑張ります」
「準備に数週間と物資、兵士全員の装備のメンテ
ナンスをするとなると、一月はかかる。それま
でに出来るだけ作って欲しい」
「それでしたら、採取依頼を中心にします」
「悪いな…アレを見てしまったら、他のを買うの
を躊躇ってしまうからな」
領主様の言っているアレとはこの前の報告の事だ
った。
もちろん、団長の耳にも届いているらしい。
いまだに団長の顔を見た事がない。
それは、今団長は領地をエリーゼに任せて王都に
出向いているからだった。
毎回、遠征の度に寂しい思いをしているアンネは
今回ばかりは不安そうな視線をむけた。
「最近死の森で強力な魔物が頻発しているのでし
ょ?そんなところにうちの兵士だけなんて……」
「大丈夫だ、我が領の兵は鍛え方が違うからな」
確かに、他の領主の兵士達と比べると、あきらかに
顔つきから違っていた。
それも、これも、エリーゼが鬼のように扱き上げて
いるせいだった。