第十話 騎士エリーゼ
シールドを張ったまま怯えているとさっきの騎士が戻っ
てきた。
「すまないな、助かったよ」
「いえ、俺なんか戦えないのでこんな事しかできなくて」
「それは……結界かい?」
「はい…自分の周りにだけならなんとか…」
「少し攻撃してみても?」
「大丈夫だと思いますけど……」
そう言うと騎士は剣を構えると次第に剣が炎を纏った。
突き出しただけなのだが、一気に地響きがして地面が揺
れた。
「これはすごいな、私の攻撃をいとも簡単に防げるとは」
「びっくりしたぁ〜」
「すまない、驚かせてしまったね。私はこの先の街の領
主様の護衛騎士をしているエリーゼという。」
「この先に街があるんですね?よかったぁ〜これで食べ
物と野宿からは解放される〜」
「だが、どうしてこんな場所にいたんだい?そもそもこ
の森は危険区域で、一人でいる事など危ないというの
に…」
まさかそんな危ない場所に放り出されていたとは思わな
かった。
「気がついたら森の中にいたんです。それにここがどこ
なのかも分からないしで、困ってるんです。もしよか
ったら街まで連れていって貰えませんか?」
「それには構わないが……少し身を綺麗にした方がいい
かもしれないな」
騎士の言われた事を疑問に思うと自分の服を見た。
確かにずっと森を彷徨い続けたせいで汚れていた。
そういえば水浴びもしてないので臭いも気になる所だっ
た。
そういえば、さっき水場を見つけた。
そこで一旦身体を洗うべきか……。
そう思うと、さっそく洗ってくる事にした。
「そうだな、こちらも少し時間がかかるからな…」
「時間ですか?」
「あぁ、この野党を片づけねばならんからな」
「なるほど、ではすぐに行って来ます」
「一人で大丈夫か?誰か付いていかせよう」
「いえ、一人で平気です!」
そう言うと駆け出した。
水浴びを女性に見られたくなかった。
まだ童貞なので、恥ずかしいし臭いを指摘された事すら
恥ずかしくて仕方なかった。
服は1着しかないので替えはない。
身体を洗うついでに服も洗う。
本当は乾かしてから着たいのだが、それもできないので
ぎゅっと絞るとそのまま着たのだった。
「戻りました〜」
慌てて戻ってくると、丁度地面からカードを拾う所だっ
た。
「それはなんですか?」
「これはさっきの盗賊のものだ。君は知らないのか?」
「えっ……俺はちょっと記憶が曖昧で……どうしてあんな
場所にいたかさえわからないんです」
「なんと…不憫な、名前は思い出せるか?」
「多分……かなでと呼ばれていた気がします」
「カナデか、それは大変だったな、まだ子供だと言うの
に…そうだ!うちの領主様に聞いてみて暫くの滞在許
可を頼んでみる事にしよう!こんな子供を放置しては
おけないからな!」
騎士のエリーゼはどういう訳か、神崎の事をまるで自分
の事のように気遣ってくれたのだった。




