さらに進みながら 1
体のだるさを感じながら、彼は廊下を進み続けていた。上半身だけに疲れがたまっていると感じていたが、斧と盾を多く使っていたせいで、上半身を酷使したように感じていたが、よくよく思い出せば、あれだけ動いているのだから、足にもかなり披露が溜まっていて当たり前だと考えなおす。そして、それを自覚すれば、足がより重くなっていると感じてしまった。歩く速度を速めることはできず、それどころか、徐々に遅くなっていくだけだった。そのまま、止まりそうな勢いだが、彼は気力というか、もはや本能だけで、歩いているに近かった。意識はほとんど現実にはなく、いつでも倒れることできる状態だ。それでも、彼が足を動かしているのは、あのロボットに合えば死んでしまうことがわかっているからだった。
しかし、本能といえば、体力がなくなれば、本能で動くこともできないだろう。限界をとうに超えていても、その先の限界を超えることは難しい。彼の足はさらに重くなっていく。つま先が地面を擦り、いつ倒れてもおかしくない。そして、ついに足がもつれて、膝が地面に着いた。自分が転んだことにも、膝に衝撃があってようやく気が付いたのだ。壁に手をついて、何とか立ち上がり、廊下を進む。そして、彼の目の前には壁があった。そこに扉はなく、行き止まりだった。彼は疲れと戦いながら、壁をノックする。他の場所と同じように、壁の向こう側が空洞になっていることを確認して、彼は斧を振り回す。斧を持つ手には力が入らないが、何とか体を回転させ、遠心力を加えて、壁に斧をぶつけた。壁には少しだけ穴が開いて、彼はその穴を斧で何とかこじ開ける。彼が潜り抜けられるだけの穴を開けて、彼は壁の奥に入っていく。
壁の向こうには扉があった。先ほどと同じ金属製のものだが、扉が取り付けられている壁も金属製だ。彼が扉に近づくと、そこにはボタンが付いていた。既に、意識が散漫な状態で、特に警戒もせずに、ボタンを押した。扉がゆっくりと勝手に開いた。何も考えずに、部屋の中に入っていく。部屋の作りは金属製で、先ほどの部屋よりも安全性の高い部屋に見えた。それ以外にもいくつか、何か置いてあるのだが、彼はそれよりも、安全に見えるその場所で休むことにした。彼も意識せずに、既に地面に寝そべって、床の冷たさを感じていた。疲れた体と意識には、その程度のことは些末なことは関係なく、ほどなくして彼は意識を手放した。
「この人が今の挑戦者カ。イイネイイネ、こんなになるまで、戦えるなんてタフだネ。もっと楽しませてもらうために、今は休むがいいサ。その間に不測の事態なんて、ボクがおこさせないからネ」
赤と黒のゴシックドレスのようなものを着ている少女が眠っている彼の顔を覗いていた。少女は心底、楽しそうな顔をしている。彼は深く眠っていて、近くに少女がいるなんてことには気が付かない。
「少し助けてあげたい気もしますガ。それは最後には彼のためにはならないようですカラ、ここは守るだけにしまショウか」
少女は部屋の隅に腰を落として、彼の方を見ていた。その部屋が安全であることは彼女の知っていた。ロボットもその部屋までは入ってこない。
「どうせナラ、こんな冷たい部屋じゃナクテ、さっきいた部屋で休めばよかったノニ。まぁ、ベッドのある部屋が絶対安全なんてことヲ、挑戦者が知るわけもないんダケド」
彼女の呟きも、もちろん彼には届かない。彼女の言う通り、先ほど彼がロボットが眠っている間に入ってくるかもしれないと言っていたベッドのある部屋にはロボットは入ることも、攻撃することもできなかった。彼がそれを知るすべは、偶然、部屋に居る状態で、ロボットの様子を伺うということくらいしかないだろう。先ほどの彼にはその偶然があったのだが、彼は戦闘することを選んだのだ。
「勇敢なのがいいこととは限らないんダケドネ」
彼が目を覚ますまで、彼女は彼を見守っていた。
彼の意識が浮上する。彼の耳が何かの音を感知して、はっとして体を起こした。部屋の中に何かいた気がしたのだが、彼が部屋を見まわたしても、そこには誰もいない。そのことに胸をなでおろして、改めて部屋の中を見渡した。その部屋には金属製の棚があり、そこには綺麗に宝石のついた指輪が並べられていた。それ以外のも棚が置いてあり、そこにもアクセサリーが並んでいた。ネックレスのようなものや、イヤリングなど、全てに宝石で装飾されている。アクセサリー以外には少数の本が、本棚に倒れた状態で並べられていた。彼は棚に近寄り、アクセサリーを手に取って眺めていた。




